抗体薬物複合体「farletuzumab ecteribulin」の安全性と有効性を評価する101試験の結果をASCOで発表

2022/06/23

文:がん+編集部

 抗体薬物複合体「farletuzumab ecteribulin」の安全性と有効性を評価する101試験の拡大パート「プラチナ抵抗性卵巣がん」の結果が、米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会2022で発表されました。

プラチナ抵抗性卵巣がんを対象とした拡大パートの安全性と有効性データを報告

 エーザイは2022年6月6日、固形がんを対象にfarletuzumab ecteribulinを評価する101試験のプラチナ抵抗性卵巣がんの拡大パートの最新知見をASCOで報告したことを発表しました。

 farletuzumab ecteribulinは、葉酸受容体α(FRα)選択的に結合する抗体ファルレツズマブに、微小管ダイナミクス阻害薬エリブリンを結合させた抗体薬物複合体です。標的となるFRαが発現したがん細胞内に取り込まれた後に、抗体からエリブリンが切り離されて抗腫瘍活性を示すと考えられています。非臨床試験では、FRα陽性がん細胞の周囲のFRα陰性がん細胞に対しても抗腫瘍活性が確認されています。

 101試験は、固形がんを対象に抗体薬物複合体farletuzumab ecteribulinの安全性と有効性を評価する第1相試験です。主要評価項目は安全性と忍容性、副次的評価項目は薬物動態、奏効率、病勢コントロール率などです。3週間に1回の投与で、0.3~1.2mg/kgの用量が評価されました。用量漸増パートの有効性と安全性のデータに基づき、プラチナ抵抗性卵巣がん患者さんを対象とした拡大パートでは、3週間に1回、0.9mg/kg(コホート1)と1.2mg/kg(コホート2)の2つの投与量で評価されました。投与開始から36週目までの6週間ごと、その後8週間ごと、および投与中止時に腫瘍評価が行われました。完全奏効と部分奏効の判定は、4週間以上経過後の次の腫瘍評価をもって確定されました。

 また、1.2mg/kgの投与量に移行する前に、0.9mg/kgの投与量で間質性肺疾患/非感染性肺炎の評価を実施。間質性肺疾患/非感染性肺炎が発現した場合、その有害事象の重症度に応じて、投与量の再検討、休薬または投与中止されました。

 安全性評価の結果、最も頻度の高い有害事象は間質性肺炎/非感染性肺炎で、2つのコホートの割合は、コホート1:37.5%、コホート2:66.7%でした。ほとんどの患者さんで重症度は低く、コホート1ではグレード1が33.3%、グレード2が4.2%、グレード3~5が0%、コホート2ではグレード1が28.6%、グレード2が33.3%、グレード3が4.8%、グレード4~5が0%でした。

 間質性肺炎の次に頻度が高かった有害事象は、発熱(コホート1:33.3%、コホート2:42.9%)、頭痛(コホート1:12.5%、コホート2:47.6%)、悪心(コホート1:25.0%、コホート2:33.3%)でした。グレード3以上の有害事象は、コホート1:33.3%、コホート2:28.6%で認められました。

 全奏効率の解析結果、コホート1が25.0%、コホート2が52.4%で、高悪性度漿液性卵巣がんの全奏効率は、コホート1が31.6%、コホート2が50.0%でした。FRαの発現レベルが50.0%未満の患者さんの全奏効率は、コホート1が33.3%、コホート2が50.0%で、FRαの発現レベルが50.0%以上の患者さんではコホート1が22.2%、コホート2が52.6%でした。

 病勢コントロール率の解析結果は、コホート1が66.7%、コホート2が95.2%でした。奏効期間の中央値は、コホート1が10.6か月、コホート2が7.6か月でした。

 本試験の治験責任医師である久留米大学医学部産科婦人科学講座の西尾真准教授は、次のように述べています。

 「我々は、本臨床試験におけるfarletuzumab ecteribulinの安全性データ、および本薬剤の2つの用量コホートと広範なFRαの発現レベルのプラチナ抵抗性卵巣がんにおける予備的な抗腫瘍活性による有効性データに勇気づけられています。前臨床試験結果から、farletuzumab ecteribulinは、臨床において酵素切断リンカー部位で抗体から殺細胞性のペイロードが切り離され、FRα陽性のがん細胞のみならず、周囲のFRα陰性がん細胞に作用するバイスタンダー効果を示す可能性があります。分子標的治療分野が進化するにつれて、抗体薬物複合体は、再発性のプラチナ抵抗性がんにおける重要なモダリティーとなりつつあります」