プロドラッグ型クルクミン「TBP1901」、安全性と抗腫瘍効果をマウスの動物実験で確認

2022/11/09

文:がん+編集部

 プロドラッグ型クルクミン「TBP1901」の安全性と抗腫瘍効果が、マウスの動物実験で確認されました。安全性の高い抗がん剤としての開発が期待されます。

TBP1901、安全性の高い抗がん剤としての開発が期待

 京都大学は2022年10月21日、経口投与では吸収されにくいというクルクミン原末の問題点を克服した安全性の高い水溶性プロドラッグ型クルクミン「TBP1901」が、既存の抗がん薬に抵抗性を示す多発性骨髄腫を移植したマウスモデルにおいて、安全性に優れ顕著な抗腫瘍効果を示すことを明らかにしたと発表しました。同大学医学研究科の金井雅史准教授、白川康太郎助教、同薬学研究科の掛谷秀昭教授、株式会社セラバイオファーマらの共同研究グループによるものです。

 クルクミンは基礎研究で様々ながん種に対し抗腫瘍効果を発揮することが証明されており、抗がん薬としての開発が期待されてきました。しかし、クルクミン原末をそのまま経口摂取しても多くは腸管で吸収されないために、その抗がん作用を引き出すのに十分な血中濃度を得ることはできませんでした。

 研究グループはこれまでに、クルクミンをプロドラッグ化することで、オキサリプラチンに抵抗性を示す大腸がんマウスモデルに対し優れた抗腫瘍効果を発揮することを報告。さらに、化合物として安定性の高い水溶性プロドラッグ型クルクミン「TBP1901」の製造方法を確立させています。

 今回、ボルテゾミブに抵抗性を示す多発性骨髄腫マウスモデルを用いて、TBP1901が体重減少などの副作用を伴うことなく、顕著な抗腫瘍効果を発揮することを明らかにしました。

 TBP1901の活性本体であるクルクミンは香辛料としても広く用いられている化合物であることから、安全性の高い抗がん剤としての開発が期待されます。

 研究グループは、次のように述べています。

 「クルクミンは香辛料としても使われている天然化合物です。クルクミンが抗がん作用を有することは多くの基礎研究で証明されていますが、経口投与では抗がん作用を発揮するのに十分な血中濃度が得られませんでした。TBP1901は体内でクルクミンに変換されるプロドラッグ型の注射製剤であり、安全性の高い新しい抗がん薬としての開発が期待できると考えています」