治療抵抗性口腔がんに対する腫瘍溶解ウイルス併用放射線療法の有効性を動物実験で確認

2022/11/22

文:がん+編集部

 放射線治療に耐性がある口腔がん細胞に対して、腫瘍溶解ウイルスと放射線治療を併用することで、治療抵抗性を解除できることが明らかになりました。

放射線治療が効きにくい口腔がんや高齢口腔がん患者さんに対する新たな治療法の実用化につながる可能性

 熊本大学は2022年11月1日、放射線治療が効きにくい口腔がん細胞に対して、放射線療法に腫瘍溶解ウイルスを併用することで極めて高い抗腫瘍効果が得られる研究結果を発表しました。同大学大学院生命科学研究部歯科口腔外科学講座の吉田遼司准教授、中山秀樹教授らとオンコリスバイオファーマ株式会社との共同研究によるものです。

 口腔がんに対する放射線治療は、手術に次ぐ有用な治療法ですが、放射線治療に抵抗性を示し再発や増悪することが問題となっており、低侵襲で高い治療効果を示す併用療法の開発が求められています。近年、腫瘍溶解ウイルスである「OBP-301」を既存の治療法と併用することで高い治療効果を発揮することが複数の悪性腫瘍で報告されていますが、放射線耐性口腔がんに対するOBP-301の有効性についてはほとんど研究されていませんでした。

 研究グループは、複数の口腔がん細胞や実際の口腔がん患者さんの腫瘍組織から樹立したモデルマウスを作製。放射線治療にOBP-301を併用することで、従来のより高い治療効果が得られるかを検討しました。

 その結果、OBP-301は放射線が効きにくい口腔がん細胞に対して放射線治療の効果を向上させることを明らかにしました。また、同じ結果は複数の口腔がん移植動物モデルでも確認され、問題となるような副作用は認められませんでした。以上の結果から、OBP-301併用放射線療法は実際のヒト口腔がんでも低侵襲で高い抗腫瘍効果を発揮する可能性が示されました。

 研究グループは展開として、次のように述べています。

 「今回の研究成果から、腫瘍溶解ウイルスが放射線耐性口腔がんに対する放射線療法の抗腫瘍効果を、効果的に増強することが明らかとなりました。また、動物モデルの結果から実際の口腔がん患者においても低侵襲かつ効果的な治療法となり得ることが示されました。今後、臨床試験を推進することで、放射線治療が効きにくい口腔がんや高齢口腔がん患者に対する新たな治療法の実用化につながる可能性があります」