進行直腸がん、術前化学放射線療法の効果を予測する新たなバイオマーカーを発見

2023/02/28

文:がん+編集部

 進行直腸がんの遺伝子発現解析により、術前化学放射線療法の効果を予測する新たなバイオマーカーが発見されました。

細胞障害性リンパ球が、がん組織に入り込んでいる程度により術前化学放射線療法の治療効果を予測

 がん研有明病院は2023年2月9日、進行直腸がんの術前化学放射線療法が行われる前の生検検体を用いて、次世代シーケンサーによる遺伝子発現解析を行い、化学放射線療法の治療効果を予測するような遺伝子発現パターンを発見したと発表しました。同病院大腸外科の秋吉高志副部長、がん研究会がんプレシジョン医療研究センターの森誠一プロジェクトリーダーらの研究グループによるものです。

 ある程度進行してはいるものの、手術で治癒の可能性がある進行直腸がんに対し、術前化学放射線療法が標準治療として広く行われていますが、その効果は患者さんによってさまざまです。

 研究グループは、化学放射線療法前の患者さん298人の検体の遺伝子解析を実施。細胞傷害性リンパ球の遺伝子発現スコアが、術前化学放射線療法の効果が良好だった患者さんでは、効果が不良だった患者案と比べて有意に高いことがわかりました。

 この細胞障害性リンパ球スコアは、画像でのがんの広がりや切除後の顕微鏡でのがんの広がりなどの、他の臨床的、病理学的因子を含めて解析しても、それらとは無関係に、術前化学放射線治療の効果を予測できることが明らかになりました。

 研究グループは今後の展開として、次のように述べています。

 「本研究により、次世代シーケンサーを用いて、化学放射線治療を開始する前の腫瘍検体における細胞障害性リンパ球ががん組織に入り込んでいる程度が、術前化学放射線療法の治療効果を予測できることが明らかとなりました。今後、実地の臨床で応用とするためには、他の病院で治療している多くの患者さんの協力を得ながら、より多数の症例データを用いた検証が必要です。さらに、今後遺伝子発現解析に加え、ゲノム解析や画像解析を組み合わせて解析することで、治療効果を予測する精度がさらに向上できるものと考えています」