HR陽性HER2陰性転移性乳がんを対象にsacituzumab govitecan-hziyを評価したTROPiCS-02試験の結果を発表

2023/06/28

文:がん+編集部

 治療歴のあるHR陽性HER2陰性の転移性乳がんを対象に、sacituzumab govitecan-hziyを評価したTROPiCS-02試験の結果が発表されました。化学療法と比較した解析の結果、全生存期間の継続的かつ臨床的に意義のある改善が認められました。

sacituzumab govitecan-hziy、化学療法と比較して死亡リスクを21%低下

 ギリアド・サイエンシズは6月5日、HR陽性HER2陰性の転移性乳がんを対象に、sacituzumab govitecan-hziyを評価したTROPiCS-02試験の結果を発表しました。

 TROPiCS-02試験は、内分泌療法、CDK4/6阻害薬、転移性疾患に対する2~4つの化学療法による治療歴があるHR陽性/HER2陰性の転移性乳がん患者さん543人を対象に、sacituzumab govitecan-hziyと医師が選択した化学療法(エリブリン、カペシタビン、ゲムシタビン、ビノレルビン)を比較した第3相試験です。主要評価項目は無増悪生存期間、副次評価項目は全生存期間、全奏効率、クリニカルベネフィット率、奏効期間、安全性、忍容性、生活の質などでした。

 解析の結果、sacituzumab govitecan-hziyは化学療法と比較して、全生存期間の臨床的に意義のある改善を認め、死亡リスクを21%低減しました。全生存期間の中央値は、sacituzumab govitecan-hziy 14.5か月、化学療法11.2か月でした。

 sacituzumab govitecan-hziyと化学療法の無増悪生存率は、6か月時点で45.6%と28.4%、12か月で21.7%と8.4%、18か月で14.4%と4.7%でした。sacituzumab govitecan-hziyと化学療法の全生存率は、6か月時点で60.9%と47.1%、12か月で39.2%と31.7%、18か月で25.7%と21.1%でした。

 HER2発現率0とHER2低発現の患者さんに対する全生存期間の解析では、いずれのグループでも改善が認められました。HER2発現率0の全生存期間中央値は、sacituzumab govitecan-hziy13.6か月、化学療法10.8か月、HER2低発現では、sacituzumab govitecan-hziy15.4か月、化学療法11.5か月でした。

 ダナ・ファーバーがん研究所乳がん部門長兼ハーバード大学医学部の准教授の、サラ・トレイニー博士は次のように述べています。

 「今回発表された長期解析結果は、sacituzumab govitecanが、治療歴のあるHR+/HER2-転移性乳がんに対し、従来の伝統的な化学療法よりも長期にわたりOSベネフィットをもたらすことを示しています。この病期では、逐次化学療法が一般的ですが、次第に治療効果が小さくなります。患者さんの生存期間を延ばす可能性のある新薬には、特に大きな意義があります」