頭頸部がんアルミノックス治療中、病室で快適に過ごすための特殊ライトを用いた研究を開始

2023/07/31

文:がん+編集部

 頭頸部がんに対するアルミノックス治療(光免疫療法)を受けた患者さんが、病室で快適に過ごすための特殊ライトを用いた研究が開始されました。

「励起光減弱ライト」を使用した患者さんの生活の質を評価

 東海大学医学部付属病院と楽天メディカル株式会社は2023年7月5日、頭頸部アルミノックス治療に用いる特定の波長の光をカットした「励起光減弱(れいきこうげんじゃく)ライトを使用した患者さんの生活の質に関する共同研究を開始したことを発表しました。

 アルミノックス治療は、がん細胞が発現する細胞表面のタンパク質を特異的に認識する抗体と光感受性物質IR700の複合体を合成した薬剤「セツキシマブ サロタロカンナトリウム(製品名:アキャルックス)」を投与し、標的タンパク質に結合させた状態で近赤外光を照射することでがん細胞を破壊する治療法です。

 治療中は、アルミノックス治療による光照射以外でのセツキシマブ サロタロカンナトリウムの反応を避けるため、一定の期間、直射日光を避け、室内では手元でのスポットライト使用を避けるなど照度を管理した環境下で過ごす必要があります。

 そこで研究グループは、アルミノックス治療を受けた患者さんが室内で読書や食事をしやすくなるような環境改善を目指し、650nmから900nmの波長を99%遮断するフィルターを装着した卓上灯「励起光減弱ライト」を用いることで患者さんのQOLが向上するかを評価する研究を開始しました。

 東海大学医学部付属病院は、次のように述べています。

 「がん治療において患者さんにとって最良の治療選択肢を提供できるよう最新の治療を導入しています。また、治療にあたっては、患者さんの生活の質(QOL)をできるだけ高い状態で保つことを心がけています。今回、耳鼻咽喉科・頭頸部外科において頭頸部がんに対してアルミノックス治療というこれまでと異なる治療を導入するに当たり、本治療中の一定期間は直射日光からの回避や室内における照度管理が必要となり、QOL低下が懸念されることから、対策が必要だと考えました。そこで楽天メディカル株式会社とともに、避けなくてはいけない波長の光を選択的に除去することのできる励起光減弱ライトを開発しました。励起光減弱ライトを使うことで、室内での読書や食事などの治療中の生活を明るい環境下で過ごすことが可能となり、QOLの低下を防ぐことができると考えています。また、医師・看護師・薬剤師など医療従事者にとっても明るい治療環境を実現することは、診察や薬剤の確認など医療安全管理上において大きな意義があると考えております」