近赤外光線免疫療法の効果を予測する新たな画像評価技術の開発に成功

2023/09/06

文:がん+編集部

 近赤外光線免疫療法の効果を予測する新たな画像評価技術の開発に成功。マイクロバブル造影剤と従来の超音波機器を組み合わせて評価する新たな画像バイオマーカーによって、近赤外光線免疫療法の適切な治療の実施と効果向上が期待できます。

開発された近赤外光線免疫療法バイオマーカー、臨床応用へのハードルは低い

 名古屋大学は2023年8月8日、近赤外光線免疫療法の効果を予測する新たな画像評価技術の開発に成功したことを発表しました。同大大学院医学系研究科最先端イメージング分析センター/B3 ユニットフロンティア長・高等研究院の佐藤和秀特任講師、総合保健学専攻オミックス医療科学の松岡耕平大学院生、佐藤光夫教授らの研究グループによるものです。

 手術・放射線・化学療法・がん免疫療法に続く第5のがん治療といわれる近赤外光線免疫療法が注目されていますが、照射する光が組織内で反射や散乱により減衰してしまい均一な照射が困難なため、光照射の完遂を適切に判断できる指標が求められていました。

 研究グループは、近赤外光線免疫療法で治療した腫瘍でEPR効果が高まることに着目し、治療後に血管周囲のスペースが光細胞死によって拡大することでマイクロサイズの粒子をも滞留すること(マイクロサイズ超EPR効果)を新規に発見し、そのメカニズム解明と滞留する粒子サイズの上限を明らかにしました。

 またそのマイクロサイズ超EPR効果を応用し、2µmのマイクロバブルの滞留性を超音波画像検査で評価する新技術の開発により、近赤外光線免疫療法において、光照射後に治療効果の程度が推定できることを明らかにしました。

 この方法は、肝臓腫瘍の超音波検査診断薬として認可済のマイクロバブル造影剤と従来の超音波機器を組み合わせて評価できるため、臨床応用のハードルが低く、実装の可能性が期待されます。

 研究グループは今後の展開として次のように述べています。

 「マイクロバブル造影剤を用いた超音波検査である、造影超音波検査は肝臓腫瘍の診断薬と診断方法として広く病院で用いられている医療技術であり、今回開発したマイクロバブル造影剤の滞留性によって近赤外光線免疫療法の治療効果を確認する方法のハードルは、ソフト、ハードの両面からも低いと考えられます。このため、本評価技術のさらなる最適化を進めるとともに、臨床試験への移行に向けた基礎検討、非臨床試験を実施することで、近赤外光線免疫療法のより適切な治療の実施とその効果の上昇が期待できると考えられます。日本発の近赤外光線免疫療法のバイオマーカーとしての技術開発を今後も展開し、患者さんへの貢献をしていきたいと考えています」

※正常組織では漏れ出さない、20-200nm程度の分子の薬剤が腫瘍血管から透過しがん組織に到達して患部に集積すること