乳がんに対するHER2を標的とする抗体医薬「HER2-CasMab」の開発に成功

2024/03/27

文:がん+編集部

 HER2を標的とする抗体医薬「HER2-CasMab」が開発されました。HER2-CasMabは、がん細胞だけに反応し、正常な上皮細胞には全く反応しませんでした。

HER2-CasMab、がん細胞に対して高い反応が見られるだけでなく、正常の上皮細胞には全く反応を示さず

 東北大学は2024年2月9日、がん細胞だけに反応し、正常の上皮細胞には全く反応しないHER2を標的とした抗体医薬HER2-CasMabの開発に成功したことを発表しました。同大学大学院医学系研究科分子薬理学分野の加藤幸成教授らの研究グループによるものです。

 HER2を標的とした抗体医薬としてトラスツズマブが使用され高い効果を示していますが、トラスツズマブは正常細胞に対しても反応性を示し、特に心臓に対する副作用が報告されていました。そのため、副作用のないHER2を標的とした抗体医薬の開発が求められていました。

 研究グループは、2014年に、がん細胞を特異的に攻撃する抗体医薬CasMabの開発に成功しており、今回、新たにHER2を標的とするHER2-CasMabを開発。HER2-CasMabは、がん細胞に対して高い反応が見られるだけでなく、正常の上皮細胞には全く反応しませんでした。また、HER2-CasMab は乳がんに対し、トラスツズマブと同等の抗腫瘍効果を示しました。これらの結果から、HER2-CasMabを抗体薬物複合体やCAR-T 細胞療法に応用することにより、副作用のない画期的な治療法の開発につながる可能性が期待されます。