【セミナー】前立腺がんの骨転移、疼痛緩和から生存期間の延長を目指した治療へ
2018/02/13
取材・文 がん+編集部
去勢抵抗性前立腺がんでは約9割に骨転移
バイエル薬品株式会社は1月31日、「前立腺がんの骨転移マネジメントの重要性とその課題」と題したプレスセミナーを開催し、佐藤威文前立腺クリニックの佐藤威文先生が講演しました。前立腺がんの国内罹患数は、2017年のがん統計予測によれば86,100人と、男性のがん罹患数の中で3番目に多い結果となっています(国立がん研究センター発表)。また、前立腺がんでは、男性ホルモンの分泌を抑える治療の効果が弱くなる「去勢抵抗性前立腺がん」になると、患者さんの約9割で骨に転移します。骨転移を発症すると、痛みなどの症状に加えて骨折しやすくなり、骨折する部位によっては寝たきりになることもあり、前立腺がんの骨転移に対する治療が課題となっています。
バイエル薬品が2017年12月に前立腺がんの患者さん103名、家族103名に行ったインターネットアンケート調査によれば、治療に関して不安があると回答した患者さん・家族の7割以上が、がんの転移について不安を持っていることが分かりました。
また、転移を有していても、生存期間が他のがんと比べて長いのも前立腺がんの特徴です。一方で、高齢になるほど前立腺がんで亡くなる患者さんの割合が多くなることも分かっています。超高齢社会の日本において、「高齢者への骨転移の治療は重要なポイント」と佐藤先生は語りました。
骨転移治療ではALP値にも注目を
前立腺がんの骨転移において問題となるのが、脊髄圧迫や病的骨折などからなる骨関連事象(SRE:skeletal related events)と、痛みなどの症状を有する症候性骨関連事象(SSE: symptomatic skeletal events)です。SRE・SSEによる移動能力の低下や、痛みによるQOLの低下が発生し、最近では医療費が増加することも分かってきました。また、SRE・SSEによって生存期間が短くなるという報告もあるため、「SREやSSEをいかに抑えていくかが大切」と佐藤先生は言います。
また、前立腺がんの骨転移治療では、骨転移によって上昇するアルカリフォスファターゼ(ALP)も注目すべき値です。ALP値が低下した患者さんと、ALP値の改善がみられなかった患者さんを比べると生存期間が長くなることが臨床試験からも分かっており、こうした生存期間延長を目標とする治療もできるようになりました。前立腺がんの治療では、「PSA値を下げることを目的にしがちですが、骨転移の治療ではALP値に注目することが大切になります」(佐藤先生)
前立腺がんの骨転移治療は、以前は痛みを緩和する治療が中心でした。しかし、佐藤先生によれば、「徐々に治療目標がSSEやSREの予防にシフトし、現在は、生存期間の延長を目標とする治療になっている」そうです。最後に、「前立腺がんの治療では長期のがんのコントロールが可能であり、“あきらめない治療”が必要です」と語り、講演を締めくくりました。