抗PD-1抗体の効果を血液中の免疫チェックポイント関連因子から予測できることが判明
2024/04/24
文:がん+編集部
抗PD-1抗体の効果を、血液中の免疫チェックポイント関連因子から予測できることが判明。非小細胞肺がんの治療方針検討に役立つ可能性があります。
非小細胞肺がんに対して免疫チェックポイント阻害薬の有効性を侵襲性が少ない方法で効率的に予測できる可能性
近畿大学は2024年4月2日、血液中の免疫チェックポイント関連因子から抗PD-1抗体の効果を予測できることを明らかにしたと発表しました。同大学医学部内科学教室の林秀敏主任教授、近畿大学病院がんセンターの中川和彦特任教授、京都大学大学院医学研究科がん免疫PDT研究講座の茶本健司特定教授、京都大学大学院医学研究科附属がん免疫総合研究センターセンター長・京都大学高等研究院の本庶佑特別教授、シスメックス株式会社らの研究グループによるものです。この研究に関する論文は、「Journal of Clinical Investigation」にオンライン掲載されています。
抗PD-1抗体による治療は、効果が高い一方で長期的に有効性が得られる患者さんの割合は約10~20%であるため、抗PD-1抗体が有効かを予測することが、治療方針を決定するうえで重要とされています。現在、腫瘍組織を用いて抗PD-1抗体の有効性を予測する手法はありますが、精度が十分でなく、また、腫瘍組織からリアルタイムに免疫状態を把握することはできないため、血液を用いて免疫状況を予測できるバイオマーカーが求められています。
研究グループは、進行性の非小細胞肺がん患者さん50人を対象に、抗PD-1抗体のバイオマーカーを探索する医師主導試験を実施。ニボルマブ(製品名:オプジーボ)による治療前に採取した血液を調べ、血球の遺伝子解析と、これまでに開発した検査法を用いた血漿中の可溶性免疫チェックポイント関連因子(PD-L1、PD-1、CTLA-4)の精密な測定などを行い、抗PD-1抗体による治療の有効性との関連を調べました。
その結果、血漿中のPD-L1とCTLA-4の濃度を確認することで、抗PD-1抗体の有効性を予測できる可能性が示唆されました。
さらに、がん細胞を攻撃するT細胞の遺伝子発現解析を行ったところ、免疫チェックポイント関連因子の濃度とT細胞の疲弊度合いが関連していることも明らかになりました。
本庶佑特別教授は、次のように述べています。
「本研究は、がん免疫治療の効果予測へ向けた重要な一歩です」
また、林秀敏主任教授は、次のように述べています。
「京都大学本庶研究室におけるPD-1の発見を契機として開発されてきた抗PD-1抗体は、進行非小細胞肺がん治療で幅広く使用されています。本研究は血液検体を利用した悪性腫瘍に対する免疫環境(リンパ球の疲弊具合)の簡便な評価と免疫チェックポイント阻害薬の有効性の予測について報告した論文です。本庶先生の提案のもとで京都大学とシスメックス社の開発した可溶性PD-1、PD-L1、CTLA-4測定法がニボルマブの有効性を予想できるか検討するため、近畿大学にて行われた医師主導治験(Nivolution試験)の臨床結果および、京都大学、近畿大学を中心とした施設による追加研究の結果がもととなっています。本研究結果により、肺がん患者さんに対して免疫チェックポイント阻害薬の有効性を侵襲性が少ない方法で効率的に予測できる可能性があります。また同時に今後の血液検体を利用した腫瘍免疫研究への発展が期待されます」