肝細胞がん、血液検査と腫瘍マーカーを組み合わせた新たな診断法を開発
2024/06/03
文:がん+編集部
肝細胞がんに対する血液検査と腫瘍マーカーを組み合わせた新たな診断法が開発されました。解析に要する日数が3日から1日に短縮され、簡便かつ超高感度に定量測定が可能になります。
解析日数を3日から1日に短縮、診断のための新規指標も開発
山口大学は2024年5月14日、肝細胞がんに対する血液検査と腫瘍マーカーを組み合わせた新たな診断法を開発したことを発表しました。同大学大学院医学系研究科臨床検査・腫瘍学講座の山﨑隆弘教授、末廣寛准教授、國宗勇希大学院生、消化器・腫瘍外科学講座の永野浩昭教授、消化器内科学講座の高見太郎教授らの研究グループによるものです。
C型肝炎やB形肝炎ウイルスに関連した肝臓がんが年々減少している一方で、ウイルス感染と関係しない慢性肝障害を原因とする非ウイルス性の肝臓がんが増加傾向にあります。しかし、非ウイルス性の肝臓がんに対しては、早期発見のための有効な検査法がなく、新たな検査法の開発が望まれていました。
研究グループはこれまでに、DNAを3種類のメチル化制限酵素で処理してメチル化されているDNAのみをデジタルPCRで測定する「CORDアッセイ」を開発し、簡便かつ低コストで高感度な定量化に成功していました。同技術を用いて「SEPT9」という遺伝子のメチル化レベルを調べたところ、肝臓がん診断に非常に有用であることや、分子標的薬の効き目と関係あることを発見しています。今回、工程の簡素化や検査の診断性能向上を目指し、改良型CORDアッセイを開発しました。
その結果、開発した改良型CORDアッセイではトータルの検査工程を約3日から約1日に短縮することに成功。次に、健常者154人、肝臓がんのない慢性肝障害患者さん93人、肝臓がん患者さん269人の計516人の血清試料を用い、改良型CORDアッセイで新たなバイオマーカー候補であるメチル化HOXA1(m-HOXA1)の肝がん診断性能を評価するとともに、従来の肝臓がんの腫瘍マーカー(AFP、DCP)も測定しました。その結果、m-HOXA1 の肝がん診断性能は感度69.1%、特異度78.5%で(カットオフ値を310コピー/mL)、従来の腫瘍マーカーAFPよりも優れ、DCPとはほぼ同等でした。
研究グループはさらに、年齢、性別、腫瘍マーカー(AFP、DCP)、m-HOXA1による肝臓がんの新規診断指標「ASDAm-H1 index」を開発。その診断精度はAUC0.96、感度86.2%、特異度93.9%(カットオフ値,0.62)でした。ウイルス性および非ウイルス性肝臓がんの感度は同等(85.0%、87.5%)であり、早期肝臓がんでも76.3%と高い検査感度でした。
研究グループは今後の展望として、次のように述べています。
「リキッドバイオプシー検査と腫瘍マーカーの組み合わせによるがん診断インデックスは、他のがん種にも応用可能です。実際に、本研究者らは胃がんや膵がんでもその有用性を確認しています。様々な臓器の早期がん診断に有効な方法として、今後も開発していきます」