KRAS遺伝子変異陽性肺がんに対する「WEE1」タンパク質を標的とした新たな治療法を開発
2024/06/18
文:がん+編集部
KRAS遺伝子変異陽性肺がんに対し、「WEE1」タンパク質を標的とした新たな治療法が開発されました。
WEE1阻害薬との併用、ソトラシブの効果が得られない患者さんに対しても有望な治療であることを示唆
金沢大学は2024年5月23日、KRAS遺伝子変異陽性肺がんに対する「WEE1」タンパク質を標的とした新たな治療法の開発に成功したことを発表しました。同大学がん進展制御研究所/ナノ生命科学研究所の福田康二助教、同附属病院腫瘍内科/ナノ生命科学研究所の竹内伸司講師、同呼吸器内科/ナノ生命科学研究所/がん進展制御研究所の矢野聖二教授らの研究グループによるものです。
KRAS遺伝子変異は、肺腺がん患者さんの10%程度で認められる遺伝子変異です。これまでに、KRAS-G12C変異に対する阻害薬ソトラシブが承認されましたが、有効性が限定的で薬剤耐性が課題となっていました。
研究グループはKRAS遺伝子変異陽性肺がんの治療標的を探索するため、746種類の遺伝子を実験的に破壊することにより、WEE1という分子を同定しました。WEE1阻害薬とソトラシブの併用は、がん抑制遺伝子TP53変異を共存しているKRAS-G12C遺伝子変異陽性肺がん細胞に対して顕著な縮小効果を認めました。さらに、ソトラシブが無効だった KRAS-G12C 変異肺がん患者さんのがん組織を移植したマウスの実験では、この2つの薬剤の併用により腫瘍がほぼ消失することが確認され、ソトラシブの効果が得られない患者さんに対しても有望な治療であることが示唆されました。
研究グループは今後の展開として、次のように述べています。
「本研究で得られた成果に基づいて、KRAS-G12C 阻害薬と WEE1 阻害薬併用治療の有効性と安全性を評価する臨床試験につなげていきたいと考えています」