ALK融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がんを対象にローブレナを評価したCROWN試験の結果を発表
2024/06/26
文:がん+編集部
ALK融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がんを対象に、ロルラチニブ(製品名:ローブレナ)を評価したCROWN試験の長期追跡調査結果を発表。無増悪生存期間の改善が認められました。
ローブレナ、ザーコリと比較して疾患の進行または死亡リスクが81%低下
ファイザーは2024年5月31日、CROWN試験の長期追跡調査結果を発表しました。
CROWN試験は、未治療のALK融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん患者さん296人を対象に、ロルラチニブとクリゾチニブ(製品名:ザーコリ)を比較した第3相試験です。主要評価項目は独立中央判定による無増悪生存期間、副次評価項目は治験担当医師の評価による無増悪生存期間、全生存期間、奏効割合、頭蓋内奏効割合、安全性などでした。
3年間の追跡調査では、無増悪生存期間の中央値に達しなかったため、臨床的に意義のある指標となる5年間の追跡調査で、治験担当医師による腫瘍評価に基づく長期アウトカムの評価を目的として、試験の開始当初には予定されていなかった事後解析が実施されました。
追跡期間の中央値5年時点で、治験担当医師の評価によるロルラチニブの無増悪生存期間は中央値に到達せず、ロルラチニブはクリゾチニブと比較して疾患の進行または死亡リスクが81%低下したことが示されました。5年後に疾患の進行なく生存していた患者さんは、ロルラチニブ60%、クリゾチニブ8%でした。
また今回の解析で、ロルラチニブは頭蓋内の疾患進行リスクをクリゾチニブと比較して94%低下させたことが示されました。さらに、頭蓋内の疾患進行までの期間は、ロルラチニブで中央値に到達せず、クリゾチニブは16.4か月でした。加えて、ベースライン時に脳転移が認められなかった患者さんのうち、投与開始後16か月以内に脳転移が認められたケースは、ロルラチニブで114例中わずか4例だったのに対し、クリゾチニブでは109例中39例でした。CROWN試験における今回の解析時点で、ロルラチニブを継続している患者さんは50%であったのに対し、クリゾチニブを継続している患者さんは5%でした。
Peter MacCallum Cancer Centre、腫瘍内科の医師で、CROWN試験の治験責任医師であるBenjamin Solomon医学博士は、次のように述べています。
「ALK陽性進行非小細胞肺がんは一般的に急速に進行するため、人生であらゆるチャレンジができる若年層の患者さんに大きな影響を与えます。今回の解析では、ローブレナ群の多くの患者さんで疾患の進行がなく5年以上生存し、ほぼすべての患者さんが、頭蓋内の疾患の進行から守られたことが示されました。ALK陽性非小細胞肺がん患者さんにおけるこのようなアウトカムの改善は、肺がん治療での顕著な進歩を示すものです」
また、NPO「ALK POSITIVE」リサーチ・クリニカルアフェアーズのディレクターKenneth Culver医師は、次のように述べています。
「ALK陽性進行非小細胞肺がん患者さんは、非小細胞肺がん症例の約5%ですが、世界で毎年7万2,000人の方々がALK陽性進行非小細胞肺がんと診断されていることになります。今回の新たなCROWN試験の結果は、ALK陽性進行非小細胞肺がんの分子標的治療における一次治療としての大きな進歩の象徴であり、患者コミュニティにとって注目すべきものとなりました」