HER2遺伝子増幅の固形がんを対象にエンハーツを評価したHERALD試験の結果を発表

2024/09/11

文:がん+編集部

 血液検査でHER2遺伝子増幅が認められた固形がんを対象に、トラスツズマブ デルクステカン(製品名:エンハーツ)を評価した医師主導のHERALD試験の結果を発表。多くのがん種で、有効性が確認されました。

エンハーツの奏効割合56.5%、16種類中13種類の固形がんで有意ながんの縮小を示す

 国立がん研究センターは2024年8月6日、HERALD試験の結果が科学雑誌「Journal of Clinical Oncology」に掲載されたことを発表しました。

 HERALD試験は、血液中の遊離DNAを調べる血液検査(リキッドバイオプシー)でHER2遺伝子増幅が認められた16種類の固形がん患者さん62人を対象に、トラスツズマブ デルクステカンの有効性と安全性を評価した第2相試験です。主要評価項目は奏効割合、副次的評価項目は無増悪生存期間、全生存期間、奏効期間などでした。

 試験の結果、奏効割合56.5%で、16種類のがん種のうち13種類(食道がん、大腸がん、唾液腺がん、子宮体がん、子宮頸がん、胆道がん、卵巣がん、小腸がん、尿路上皮がん、胃がん、悪性黒色腫、パジェット病、前立腺がん)で有意ながんの縮小が認められました。また、無増悪生存期間の中央値は5.7か月、全生存期間の中央値は14.6か月、奏効期間の中央値7.3か月でした。

 頻度の多かった副作用と発生頻度は、悪心58%、食欲不振53%、倦怠感40%、貧血39%などでした。トラスツズマブ デルクステカンの注意すべき副作用である間質性肺炎は、16人(26%)に見られ、そのうち11人が間質性肺炎により治療を中止しましたが、死亡に至る重篤な間質性肺炎はありませんでした。

 同研究センターは展望として、次のように述べています。

 「本研究の結果、リキッドバイオプシーで得られた血液中の遊離DNAを解析することで、HER2遺伝子増幅が認められる固形がんの患者さんに対してトラスツズマブ デルクステカンが効果的であることがわかりました。また、従来はがん組織を使った検査でHER2を診断し、その結果に基づいてHER2を標的とする治療を行っていましたが、患者さんの負担の少ないリキッドバイオプシーでもさまざまな種類のがんでトラスツズマブ デルクステカンの効果が期待できる患者さんを見つけることができる可能性が示されました」