「名古屋スタディ」論文として発表、子宮頸がん予防のためのHPVワクチンと有害事象に関連性なし

2018/03/02

文:がん+編集部

7万人以上の名古屋市の若い女性を対象とした大規模調査の結果

 2013年4月に厚生労働省は、子宮頸がんの予防のためにHPVワクチンを全国予防接種プログラムに組み込みました。名古屋市はそれに先駆け、2010年にHPVワクチンの無料接種を導入。全国でHPVワクチンの接種が始まった2か月後の2013年6月に未確認の有害事象報告がなされたことを受け、ワクチンの積極的な接種の呼びかけを中止しました。

 名古屋市では、HPVワクチンと有害事象の関連性を調査するため、大規模な匿名郵便によるアンケート調査を実施。1994年4月2日~2001年4月1日までに生まれた名古屋市の女性7万1177人を対象に、24の症状の発症や通院、頻度、学校の出席への影響などを調査しました。この調査は「名古屋スタディ」と呼ばれています。

 名古屋スタディの結果、2万9846人から回答が得られ、HPVワクチン接種後の24の症状のいずれに対しても、顕著な増加は見られませんでした。例えば、「異常月経出血量」(OR:1.43,95%CI:1.13-1.82)、「不規則な月経」(OR:1.29,95%CI:1.12- 1.49)、「重度の頭痛」(OR:1.19,95%CI:1.02-1.39)、慢性の「月経出血異常」(OR:1.41,95%CI:1.11-1.79)という結果でした。また、学校の出席に大きな影響を与えた症状はなく、症状の蓄積も認められなかったそうです。

 この結果から、HPVワクチンと有害事象として報告された症状との因果関係がなかったと報告されています。

 名古屋スタディは、研究担当者である名古屋市立大学大学院医学研究科の鈴木貞夫教授らが、「No Association between HPV Vaccine and Reported Post-Vaccination Symptoms in Japanese Young Women: Results of the Nagoya Study」という論文名で、国際ジャーナルの「Papillomavirus Research」で発表しました。

 論文発表されたことで、さまざまな意見がでると思います。調査の内容があらためて見直され、子宮頸がんワクチンの接種に関しての課題が解決されるきっかけとなることが期待されます。