【セミナー】肝臓がん、分子標的薬の二次治療としてレゴラフェニブが承認
2018/03/09
文:がん+編集部
肝炎ウイルス治療の進歩により、肝臓がんの原因にも変化が
これまで、切除不能の肝細胞がんに対する分子標的薬はソラフェニブ(製品名:ネクサバール)しかなく、ソラフェニブが効かなくなった場合の二次治療はアンメット・メディカルニーズとなっていました。そうした中、レゴラフェニブ(製品名:スチバーガ)が国際共同第3相臨床試験の「RESORCE試験」で、二次治療において全生存期間(OS)が有意に延長されたことが確認され、治療薬として承認されました。
これを受け、バイエル薬品株式会社は3月6日、「切除不能肝細胞がんに対する2nd-line治療の最新エビデンス」と題したプレスセミナーを開催。近畿大学医学部消化器内科学主任教授の工藤正俊先生と国立がん研究センター東病院肝胆膵内科科長の池田公史先生を招き、講演が行われました。
肝細胞がんの約60%がC型肝炎ウイルスの持続感染により、慢性肝炎から肝硬変、肝臓がんになるといわれ、B型肝炎ウイルスと合わせると75%程度が肝炎ウイルスといわれています。また、組織型では肝細胞がんが肝臓がんの中で最も多く、約80%前後といわれています。日本の肝臓がん患者数は、約4万1000人(2013年)で、5年生存率は35.3%、10年生存率では、14.6%と予後の悪いがんの1つとされています。
また、肝臓がんは、部位別罹患者数(2013年)で男性が6番目、女性で7番目に多く、死亡者数(2016年)は、男性で3番目、女性で6番目となっています。肝臓がんによる死亡者数は、B型C型肝炎ウイルスの治療が進んだことで減少していますが、C型肝炎ウイルスを駆除した場合でも肝臓がんの可能性はゼロになったわけではないため、注意深いフォローアップが必要です。工藤先生は、「C型肝炎ウイルスが起因となる肝臓がんは減少していますが、糖尿病や非アルコール性脂肪肝(NASH)などが原因の肝臓がんは増加傾向にあります」と、肝臓がんの疫学と現状を講演の中で話されました。
肝臓がんの薬物療法と新薬がもたらすパラダイムシフト
RESORCE試験の対象は、573例が登録され、レゴラフェニブ群が379例、プラセボ群が194例です。Child-Pugh(チャイルドピュー)分類でA、大血管への浸潤の有無、肝臓以外への転移の有無、AFP値、Eastern Cooperative Oncology Group(ECOG)の設定した全身状態を考慮してバランスをとり、レゴラフェニブ群とプラセボ群に無作為に振り分けられました。主要評価項目はOS、副次評価項目は無増悪生存期間(PFS)、無増悪期間(TTP)、奏効率、病勢コントロール率。OSの中央値は、レゴラフェニブ群が10.6か月に対してプラセボ群は7.8か月という結果になり、有意な延長が認められました。
有害事象は、レゴラフェニブ群100%に対して、プラセボ群が93%、治療関連有害事象はレゴラフェニブ群が93%に対してプラセボ群は52%が認められました。そのうち最も多くみられたグレード3、4の有害事象は高血圧で、次いで手足症候群、疲労、下痢という順でした。肝胆系障害はプラセボ群で多くみられましたが、重篤な有害事象は、レゴラフェニブ群で44%、プラセボ群で31%、重篤な治療関連有害事象は、それぞれ10%と3%という結果でした。健康関連QOLは両群で有意差は認められていません。
今回のRESORCE試験の結果に関して池田先生は、講演の中で次のようにコメントをしています。「ソラフェニブの治療後に病勢が増悪した場合の二次治療薬はアンメット・メディカルニーズでした。レゴラフェニブは、ソラフェニブによる治療後に病勢が増悪しかつ忍容性が認められた切除不能の肝細胞がんに対してOSが有意に延長したことで、一次治療でソラフェニブ、二次治療でレゴラフェニブという流れが標準治療となりました。レゴラフェニブの治療効果を期待するためには、適切な症例選択と副作用マネジメントの徹底が必要です」
新薬が増えることで、局所療法から分子標的薬などの全身両方への移行が早まることが予想されます。国際共同観察研究REFINEで、日常臨床における様々なデータが集積され評価されることが期待されます。