問い合わせ殺到 がん光免疫療法の治験に対して国がんが回答を発表

2018/03/27

文:がん+編集部

がん光免疫療法の治験に寄せられた7つの質問に回答

 国立がん研究センターは3月15日、「光免疫療法 治験についてのお知らせ」として、光免疫療法への問い合わせに対する回答を掲載しました。これは、がん光免疫療法の国内初の臨床試験が同センター東病院で3月14日に始まったことが報道され、多くの問い合わせが寄せられたことを受けてのものです。

 光免疫療法は、アメリカ国立衛生研究所の小林久隆主任研究員らの研究チームが開発した治療法です。既存の分子標的薬をより選択的にがん細胞に働きかけることで、より副作用を軽減し効果が得られる治療法として期待されています。

 発表された主な質問と回答は、以下の通りです。

Q:対象のがん種は何か
A:現段階では、標準治療法がない局所再発された頭頚部扁平上皮がんです。

Q:治験に参加できる人数はどのくらいか
A:第1相試験は薬の安全性の確認、有効で安全な投与量や投与方法をしらべることが目的なので、ごく少数の患者さんに参加していただくことになります。予定数に達した場合は登録を終了します。

Q:他の病院で第1相試験を行っているか
A:国立がん研究センター東病院のみで実施される予定です。

Q:第2相試験あるいは第3相試験はいつ頃始まるのか
A:第1相試験で薬の安全性の確認、有効で安全な投与量や投与方法を調べ、第2相試験あるいは第3相試験を行えるか、いつから開始するかどこの医療機関で実施するかなどを治験依頼者(製薬企業等)が判断します。開始時期については未定です。

Q:頭頚部がん以外のがん種の治験はいつ始まるのか
A:現在、治験依頼者(製薬企業等)が検討を行っている段階なので、対象のがん種や開始時期などは未定です。

Q:治験に参加できるかどうか、電話やメールで教えて欲しい
A:現在の患者さんの病状、健康状態を正確に判断することはできないので、確実に参加できる治験や臨床研究の紹介や参加できるかなどの内容にはお答えできません。

Q:光免疫療法はどのような仕組みか
A:本治験で使用する薬剤は、がんの表面にあるたんぱく質「EGFR(上皮成長因子受容体)」に結びつく抗体を使います。その抗体に、近赤外線光によって反応を起こす化学物質を付け、静脈注射で体内に入れます。抗体はがん細胞に届いて結合し、近赤外線の光を照射すると、化学反応を起こしてがん細胞が破壊されます。EGFRが多く出ていないがん腫や、近赤外線光が当たらない場所にあるがん腫については、十分な効果が得られないことが推測されます。治験等の参加を希望される方は、まず、患者さんの主治医にご相談ください。また、医師は、その患者さんが参加条件に合致するか検査結果をみて判断します。参加条件や人数制限により、参加できないことがあります。

 なお、開発者の小林氏は、小林氏が2016年に発表した論文「近赤外線免疫療法による新規がん治療」のなかで「究極の『病気に対してより効果があり、患者の体に優しい』方法を開発し、できるだけ多くの患者を苦しめることなく救うことが、私の研究人生における生涯の目標である」と記しています。今回、第1相試験が開始されましたが、第2相試験や第3相試験で有効性や安全性、使用方法が確認され実用化されるまでには、まだ時間がかかりそうです。