国内初、CAR-T療法「チサゲンレクロイセル」を血液がんの適応で承認申請
2018/04/26
文:がん+編集部
2つの血液がんに対して、がん細胞を攻撃するように遺伝子を導入した免疫細胞療法であるCAR-T療法の承認申請が発表されました。CAR-T療法の承認申請は、国内初で、米国、欧州に続くものです。
小児を含む25歳以下CD19陽性再発又は難治性ALL、成人のCD19陽性再発又は難治性のDLBCLが対象
ノバルティスファーマ株式会社は4月23日、CAR-T療法である「CTL019」(チサゲンレクロイセル(製品名:キムリア))を2つの血液がんに対する適応で再生医療等製品製造販売の承認申請をしたと発表しました。1つは、小児を含む25歳以下のCD19陽性再発又は難治性のB細胞性急性リンパ性白血病(ALL)、もう1つは、成人のCD19陽性再発又は難治性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)を対象としています。CAR-T療法の承認申請は、国内初で、米国、欧州に続くものです。
CAR-T療法の「CTL019」は、患者さん自身の血液から採取したT細胞を、がん細胞やその他の細胞に発現するCD19を認識してがん細胞を攻撃するように遺伝子を導入した免疫細胞療法です。患者さん一人ひとりに合わせて製造されるため、高度な個別化医療を実現している反面、治療費が高くなることが懸念されています。
ALL患者さんの約60%が20歳未満で発症しており、日本人のALL患者数は約5000人。小児がんの中で最も頻度の高いがんです。患者さんの約20%に再発が見られ、化学療法や放射線、標的療法、同種造血幹細胞移植などの治療を受けていますが、有効性が持続しない場合の予後は不良だとの報告があります。
DLBCLはリンパ腫の中でも最も頻度の高いがんです。日本人の非ホジキンリンパ腫の約30~40%を占め、約2万1000人の患者さんがいます。DLBCL患者さんの約33%は再発か難治性に移行し、2次治療は自家造血幹細胞移植(ASCT)以外に化学療法しかなく、治療法が限られています。そのため、ASCTに適さなかったり、1年以内に再発したりした場合の予後は悪く、平均余命は4.4~6.3か月といわれています。
ノバルティス ファーマ 常務取締役オンコロジー事業本部長のデイビッド・レノン氏は、「再発・難治性のALLとDLBCLは生命を脅かす疾患であり、治療の選択肢は非常に限られています。CAR-T細胞医療という高度に個別化された免疫細胞医療である『CTL019』の日本での製造販売承認に向けて、大きな一歩を踏み出したことを大変嬉しく思います。この新しい治療法を一日でも早く日本のALL患者さんとDLBCL患者さんにもお届けできるよう、引き続き、厚生労働省や医療関係各位と協働して取り組んで参ります」とコメントしています。