AI活用のがん遺伝子パネル検査に関する臨床研究を開始
2018/05/10
文:がん+編集部
人工知能(AI)を活用した、がん遺伝子パネル検査実施の可能性を探る臨床研究が始まります。SBI生命の支援により、近畿大学医学部附属病院で治療中のがん患者さん対象に実施し、検査の費用負担軽減につながる新たな保険商品の開発が可能かどうかを探るそうです。
がん遺伝子パネル検査の高額費用を保障する保険商品開発のための調査
SBI生命保険株式会社と近畿大学は5月7日、近畿大学医学部附属病院で治療中のがん患者さんを対象にコグニティブ・コンピューティング・システム※という新しい概念のAIを活用した、がん遺伝子パネル検査の可能性を検討する臨床研究を開始すると発表しました。当初は、2018年夏から研究開始と発表していましたが、反響が大きかったため前倒しして5月14日から実施するそうです。
がん遺伝子パネル検査では、がん組織や血液から遺伝子情報を解析することで、患者さんにあった治療法の情報が得られます。国内の一部医療機関で提供されていますが、現在は保険診療ではありません。検査費用が高額であるため、多くのがん患者さんが利用するには社会環境が十分に整っていないという課題があります。そのため、SBI 生命では今回の研究を支援することで、「がん遺伝子パネル検査」にかかる高額な費用を保障する保険商品の開発が可能かどうかを調査するとしています。
近畿大学では、「近大クリニカルシークエンス」プロジェクトとしてがん遺伝子パネル検査に取り組み、これまでに1,000件以上のがん組織サンプルの遺伝子解析を実施してきたそうです。今回の臨床研究では、「近大クリニカルシークエンス」にコグニティブ・コンピューティング・システムの技術を取り入れることで、電子化された2000万件以上の論文情報やAIの膨大な知識情報を活用して、患者さん一人ひとりの遺伝子に適した抗がん剤を解析します。
今回の臨床研究は、近畿大学医学部附属病院で治療中のがん患者さん30名を対象に実施する予定で、定員に達したところで登録は終了するそうです。この臨床研究への参加を検討する場合は、近畿大学医学部附属病院に連絡してほしいとしています。
※コグニティブは日本語で認知のことです。従来のコンピュータのように与えられた情報だけを処理するのではなく、人間のように自ら理解、推論、学習するシステムをコグニティブ・コンピューティング・システムといいます。IBMが提唱した新しい概念の人工知能です。