肺がんの新たな悪性化遺伝子を発見 新たな治療薬の開発に期待

2018/05/28

文:がん+編集部

 非小細胞肺がんのひとつである扁平上皮がんについて、がんの発生や進行につながる仕組みが明らかになりました。新たながん診断方法や分子標的治療薬の開発が期待されます。

肺がんの約30%を占める扁平上皮がん

GGN病変
画像はリリースより

 群馬大学は5月21日、肺がんの新たながん悪性化遺伝子を発見し、がんが悪性化する仕組みを明らかにしたと発表しました。

 非小細胞肺がんのひとつである扁平上皮がんは、肺がんの約30%を占めるといわれ、喫煙やヒトパピローマウィルス(HPV)と関連するとされています。また、分子標的治療薬が有効でないために、治療が難しいという特徴もあります。

 扁平上皮がんの診断マーカーのひとつであるp63遺伝子は、代表的ながんを抑制する遺伝子として知られるp53遺伝子とよく似た構造を持つとされ、非小細胞肺がんのひとつである腺がんと区別するための診断マーカーとして使われています。

 p53遺伝子は、細胞に異常が起きたとき、増殖の抑制や修復、細胞死を起こすことで、がんの発生を抑制する役割を担っています。逆にp63遺伝子のひとつであるΔNp63遺伝子が、がんを抑制するp53の機能を阻害することで、がんの発生や進行につながる原因になると考えられていましたが、詳細な仕組みに関しては不明でした。

 また、群馬大学とコロンビア大学の研究グループは2017年に、細胞内へのグルコースの取り込みに関連するSTXBP4遺伝子が、扁平上皮がんで治療経過を不良にする新たながん悪性化遺伝子であることを発表していました。しかし、その詳細な仕組みも解明されていませんでした。

 今回、研究グループは、ΔNp63遺伝子を分解する酵素を発見したと発表しました。さらに、STXBP4遺伝子がこの酵素の働きを抑えることで、ΔNp63遺伝子の異常な増加を引き起こし、がんの発生や進行につながる仕組みを解明したそうです。

 今回の研究結果について、「将来的に、がん診断方法や分子標的治療薬の開発につながる可能性がある」と研究グループはコメントしています。