低用量アスピリンにがん抑制効果の可能性?

2018/06/27

文:がん+編集部

 低用量アスピリンに、がんの発症を抑制する効果がある可能性が示されました。2型糖尿病患者さん対象の試験で、65歳以上の患者さんではがん発症抑制効果は認められませんでしたが、65歳未満の患者さんではがんの発症が少なくなる可能性を示したそうです。

血管疾患を予防する薬剤 65歳未満の糖尿病患者さんへがん発症抑制効果の可能性

 国立循環器病研究センターは6月17日、日本人の糖尿病患者を対象とした低用量アスピリン療法が、65歳未満の患者さんではがん発症が少なくなる可能性を示したと発表しました。この研究は、奈良県立医科大学、兵庫医科大学、熊本大学との共同研究グループによるものです。

 糖尿病患者さんは、心筋梗塞や脳卒中などの血管疾患だけでなく、がんの発症頻度が高くなることが報告されています。

 低用量アスピリンは、血栓による血管疾患を予防するために使用される薬剤です。近年は、大腸がんなどの発がん予防効果についても報告されています。しかし、研究の多くは海外で実施されたものなので、日本人の糖尿病患者さんに研究報告をそのまま当てはめることは難しいと考えられました。

 そこで研究グループは、日本人の2型糖尿病患者さん2,536名を対象に約10年間の調査を行い、低用量アスピリン療法の発がん抑制効果を検証しました。研究参加者のうち318人が、がんを発症しました。その内訳は、低用量アスピリンを投与した患者群で149人、低用量アスピリンを投与しなかった患者群で169人という結果になり、低用量アスピリン療法による発がん抑制効果は認められませんでした。

 また、がんの発症は加齢とともに増加することから、研究開始時の年齢を元に65歳以上、65歳未満に分けて解析を行いました。その結果、65歳以上の患者さんでは低用量アスピリン療法のがん発症抑制効果は認められませんでしたが、65歳未満の患者さんではがんの発症が少なくなる可能性を示したそうです。この結果は、性別や血糖コントロール、喫煙歴、薬剤の服用で調整した解析でも同じだったとしています。

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画像はリリースより

 「がんのハイリスク集団である日本人糖尿病患者において低用量アスピリン療法が有効な選択肢となりうるか、今後の研究が期待されます」と研究グループは述べています。