卵巣がんの新たな治療標的となる分子を同定、薬剤耐性にも有効か
2018/09/28
文:がん+編集部
卵巣がんの薬剤耐性の新しいメカニズムが解明され、シスプラチンの効果を抑制する「TIE-1」というタンパク質が同定されました。今後、TIE-1を標的とした新しい分子標的薬の開発が期待されます。
TIE-1の働きを抑えるとシスプラチンの効果が強力に
東北大学は9月14日、薬剤耐性の卵巣がんに対する治療の標的分子として、タンパク質「TIE-1」を同定したと発表しました。この研究は、「Scientific Reports」に掲載されました。
卵巣がんの治療では、シスプラチンなどのプラチナ製剤とタキサン製剤を併用した化学療法が行われています。しかし、治療を繰り返すことで薬剤耐性ができ、治療効果がみられなくなります。このことから、薬剤耐性の卵巣がんに対する新しい治療標的の探索などが求められています。
東北大学大学院医学系研究科婦人科学分野の八重樫伸生教授と摂南大学薬学部の北谷和之講師の研究グループは、薬剤耐性を持つヒト卵巣がん細胞を用いて、シスプラチンの効果を高める標的分子を探索しました。その結果、治療標的分子の候補としてTIE-1を同定したそうです。TIE-1は、これまで血管を新たにつくることなどに関わることが明らかにされていましたが、抗がん剤の効果に対する関与は報告されていませんでした。
今回の研究から、TIE-1の働きを抑えるとシスプラチンの効果が強くなることが明らかになりました。また、TIE-1が増加すると、卵巣がん細胞が薬剤耐性を獲得しやすくなることもわかったそうです。
シスプラチンは、DNAと結合してDNAの複製を阻害することで、がん細胞の増殖を抑制します。TIE-1は、DNAに結合したシスプラチンを積極的に取り除くことで、シスプラチンの効果を抑えていることが明らかになりました。
TIE-1の働きを抑えることが卵巣がんの新たな治療戦略となる可能性があり、今後、TIE-1を標的とした新しい分子標的薬の開発が期待されます。