BRCA1遺伝子変異によるがんはどうして乳房や卵巣に多いの?

2018/10/29

文:がん+編集部

 BRCA1遺伝子の異常によって発症する遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)。なぜ、乳がんと卵巣がんが起こりやすいのか?そのメカニズムに、女性ホルモンのエストロゲンによるDNA切断作用が関連していることが明らかになりました。

「遺伝性乳がん卵巣がん症候群」の発症にエストロゲンのDNA切断作用が関連

 京都大学は10月23日、遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)の発症メカニズムを明らかにしたと発表しました。

 BRCA1遺伝子に変異のある人は乳がん卵巣がんになりやすく、これをHBOCといいます。2013年には、ハリウッド女優のアンジェリーナ・ジョリーさんが、BRCA1遺伝子変異を理由に、健康な乳房と卵巣・卵管を切除したことで話題になりました。BRCA1遺伝子変異のある人の乳がん発症リスクは、30歳から増加し、変異のない人に比べて発症リスクが6~12倍高くなるといわれています。しかし、なぜ乳腺や卵巣でがんが発生しやすいのか、そのメカニズムはよくわかっていませんでした。

 研究グループは、BRCA1遺伝子を無くした乳がん細胞とマウス乳腺を使って、エストロゲンという女性ホルモンに対する反応を調べました。その結果、エストロゲンにさらされた細胞の染色体DNAには、DNA切断が多く起こっていることを発見したそうです。

BRCA1遺伝子

画像はリリースより

 これまで、エストロゲンは、正常な乳腺細胞や乳がん細胞の増殖を促進する作用が知られていましたが、染色体DNAを切断する作用は知られていませんでした。今回の研究成果により、BRCA1タンパクが機能しなくなると、エストロゲンが細胞を増殖させる刺激を出し、さらに染色体DNAを切断することで、相乗的に乳がんと卵巣がんの発症を促進することがわかりました。そのため、BBRCA1遺伝子に変異が起こると乳がんや卵巣がんが起こりやすい理由は、乳腺や卵巣にエストロゲンが強く作用するからだと考えられます。

 現在の遺伝子診断では、BRCA1遺伝子変異がわかったとしても、がんが発生する頻度を正確に予測することはできません。しかし、今後このような研究が進むことで、BRCA1遺伝子変異によるがん発症の確率や、発症年齢のおおよその予測が可能になることも期待されます。研究グループは、「発症が50歳以降になりそうだという予測ができるようになれば、BRCA1遺伝子の変異が見つかった若い女性に対し、出産してから健康な乳房と卵巣・卵管を切除する手術を受けることを奨めることが可能になります」と、コメントしています。