ロンサーフ、胃がんに対する適応追加で優先審査品目としてFDAが受理
2018/11/06
文:がん+編集部
抗悪性腫瘍薬トリフルリジン・チピラシル塩酸塩(製品名:ロンサーフ)が、切除不能な胃がんに対する適応追加申請を米国食品医薬品局(FDA)が優先審査品目として受理しました。胃がんに対する新しい治療薬として期待されます。
全生存期間、無増悪生存期間ともに延長を確認
大鵬薬品工業株式会社は10月26日、抗悪性腫瘍薬トリフルリジン・チピラシル塩酸塩の切除不能な胃がんに対する適応申請が米FDAの優先審査品門として受理されたことを発表しました。優先指定品目に指定されたことで、薬の開発や審査や承認が迅速に進められます。
今回の申請は、第3相試験TAGS試験の結果に基づくものです。TAGS試験は、標準治療が行えなくなった既治療の切除不能な胃腺がんと食道胃接合部腺がんの患者を対象として、トリフルリジン・チピラシル塩酸塩とプラセボを比較して有効性と安全性を評価したものです。主要評価項目である全生存率※1と主な副次的評価項目である無増悪生存期間※2の延長が確認されました。また、同本試験で安全性に関する新たな所見は認められなかったそうです。
トリフルリジン・チピラシル塩酸塩は、トリフルリジンとチピラシル塩酸塩を配合したものです。トリフルリジンは、DNAの機能障害を引き起こすことで抗腫瘍効果を発揮しますが、生体内で代謝が速く単独での使用が難しい成分でした。チピラシル塩酸塩を配合することで、トリフルリジンを代謝するチミジンホスホリラーゼを阻害し血中濃度を維持します。
日本では「治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌」の適応症で大鵬薬品が2014年より販売、米国では「フルオロピリミジン療法、オキサリプラチン療法、イリノテカン療法や抗VEGF抗体療法、およびRAS野生型の場合は抗EGFR抗体療法の治療歴があり、遠隔転移を有する結腸・直腸癌」の適応症で、大鵬薬品の米国子会社である大鵬オンコロジー社が2015年より販売しています。
TAGS試験
対象:胃がんおよび食道胃接合部がん
条件:標準治療に対して不応で切除不能
登録数:507
被験薬:トリフルリジン・チピラシル塩酸塩
対照薬:プラセボ
主要評価項目:全生存期間
副次的評価項目:無増悪生存期間、安全性と耐性
※1:患者さんの亡くなった原因ががんによるかどうかは関係なく、生存していた期間のことです。
※2:奏効例(完全または30%の部分消失)で治療中にがんが進行せず安定した状態の期間のことです。