がん細胞死を回避するメカニズムを解明、新たな分子標的薬の開発に期待

文:がん+編集部

 がん細胞が細胞死を回避するメカニズムを、分子の「形」として明らかになりました。この分子の「形」を元にして新たな分子標的薬の開発が期待されます。

さまざまな方法で細胞死を回避する能力をもつがん細胞

 神戸大学は1月4日、がん細胞が死を回避するメカニズムの一端を解明したと発表しました。この成果は、同大大学院医学研究科の梶本武利助教、中村俊一教授らの研究グループと米カリフォルニア大学サンディエゴ校のアレキサンドラ ニュートン教授、アンドリュー マキャモン教授らとの共同研究によるものです。

 ヒトの細胞は、様々な要因によりDNAが傷つけられています。その多くは修復されていますが、傷ついたDNAが修復されない細胞は、DNAによりプログラムされた細胞死によって、自ら死んでいきます。しかし、がん細胞はさまざまな方法で細胞死を回避する能力を獲得することで、多くの細胞が死に至る飢餓などのストレス環境下でも生き続けることができるようになります。

 研究グループは、こうしたがん細胞の生存に関わる細胞内シグナルたんぱく質である非典型プロテインキナーゼC(aPKC)に着目し観察したところ、aPKCの働きを抑えることで細胞死が誘導されることを突き止めました。さらに、このaPKC活性因子を探索し、スフィンゴシン1-リン酸(S1P)がaPKCに直接結合して活性化させることがわかったそうです。

 神戸大学の発表では、今後の展開として「本研究では、がん細胞アポトーシスのブレーキ役として、S1Pの直接作用によるaPKCの恒常的な活性化シグナリングを新たに発見しました。本研究成果の重要なポイントは、S1PとaPKCの結合情報を分子構造レベルで取得することに成功したことです。今後は、今回明らかになった『がん細胞アポトーシスのブレーキ役としてのS1P-aPKCシグナリング」の組織・生体レベルでの検証を進め、最終的には『S1P-aPKC結合の分子構造情報』を基に、がん細胞アポトーシスのブレーキ解除をターゲットとする新たな分子標的薬開発への早期展開が期待できます」としています。