BRAF遺伝子変異陽性の大腸がん、トリプレット療法で全生存期間を大幅に改善

2019/01/28

文:がん+編集部

 BRAF遺伝子変異陽性の転移性大腸がんを対象とした、エンコラフェニブ(製品名:ビラフトビ)ビニメチニブ(製品名:メクトビ)セツキシマブ(製品名:アービタックス)併用療法の治験の結果が発表されました。全生存期間※1が大幅に改善されたそうです。

BRAFV600E遺伝子変異陽性大腸がんは、変異のない患者さんの2倍の死亡リスク

 小野薬品工業株式会社は1月15日、BRAF遺伝子変異陽性の転移性大腸がんを対象とした、エンコラフェニブ+ビニメチニブ+セツキシマブを併用するトリプレット療法を評価した第3相BEACON CRC試験の結果を発表しました。全生存期間の中央値が15.3か月だったそうです。

 BEACON CRC試験は、1~2レジメンの治療後に病勢進行したBRAF遺伝子変異陽性の転移性大腸がん患者さんを対象とした、BRAF阻害薬とMEK阻害薬の併用治療を評価するようにデザインされた初の第3相臨床試験です。エンコラフェニブ+ビニメチニブ+セツキシマブ併用(トリプレット療法)およびエンコラフェニブ+セツキシマブ(ダブレット療法)とイリノテカン/セツキシマブまたはFOLFIRI/セツキシマブを比較して、全生存期間などで評価されました。

 BRAF遺伝子変異の中でも最も多いV600タイプの転移性大腸がんは、遺伝子変異のない患者さんに比べて、死亡リスクが2倍以上高いといわれています。しかし、BRAFV600E遺伝子変異陽性の転移性大腸がんに対する治療法は、現在ありません。

 BEACON CRC試験の治験責任医師で、米国国立がん研究所のAxel Grothy医師は「BEACON CRC試験のSafety lead-in結果で認められた全生存期間の中央値15.3か月は、この患者さん集団において前例のないもので、BRAF遺伝子変異陽性の転移性大腸がん患者さんにおいて、現在の標準治療での臨床活性のベンチマークである全生存期間の中央値の約4~6か月比較した場合、大幅の改善が示されています。これらの最新データは、有効な新たな治療選択肢を切実に必要としているBRAF遺伝子変異陽性の転移性大腸がん患者さんにとって、このトリプレット療法が有益である可能性を裏付けています」とコメントしています。

 小野薬品工業は、米アレイ社とエンコラフェニブとビニメチニブに関するライセンス契約を結んでおり、2019年1月には、エンコラフェニブとビニメチニブ併用療法による「BRAF遺伝子変異を有する根治切除不能な悪性黒色腫に対する効能・効果で、両剤の日本国内での製造販売承認を取得しています。また、この2剤の併用によるBRAF遺伝子変異陽性の悪性黒色腫を対象としたCOLUMBUS試験も実施中です。

BEACON CRC試験

対象:転移性の大腸がん
条件:BRAFV600E遺伝子変異陽性の患者
フェーズ:第3相臨床試験
試験デザイン:無作為化、平行、非盲検
登録数:645人
試験群:トリプレット療法(エンコラフェニブ+ビニメチニブ+セツキシマブ)
試験群:ダブレット療法(エンコラフェニブ+セツキシマブ)
対照群:医師の選択による(イリノテカン/セツキシマブまたはFOLFIRI /セツキシマブ)
主要評価項目:全生存期間
副次的評価項目:無増悪生存期間※2、全奏効率※3、奏功期間ほか

※1:患者さんの亡くなった原因ががんによるかどうかは関係なく、生存していた期間のことです。
※2:奏効例(完全または30%の部分消失)で治療中にがんが進行せず安定した状態の期間のことです。
※3:治療によって、がんが消失または30%以上小さくなった患者さんの割合のことです。完全奏効(CR)(腫瘍が完全に消失)と、部分奏効(PR)(腫瘍が30%以上小さくなる)を足して、治療患者の総数で割ったものです。