ALK陽性肺がんに対するALK阻害薬耐性の克服法を発見
2019/02/08
文:がん+編集部
ALK陽性肺がんに使われるアレクチニブ(製品名:アレセンサ)とロルラチニブ(製品名:ローブレナ)の、治療による耐性ができるメカニズムが解明されました。また、ロルラチニブ耐性に対して、既存のALK阻害薬が再び効くようになることと、すべてのALK阻害薬に対して耐性ができても、ABLチロシンキナーゼ(ABL-TKI)が効果があることも実験的に証明したそうです。
コンピュータで耐性変異と効果的な薬剤の予測が可能になると期待
がん研究所は1月30日、 ALK融合遺伝子陽性の肺がんに対する薬剤耐性変異予測と既存のALK阻害薬を活用した耐性克服法を発見したと発表しました。第3世代のALK阻害薬の耐性の克服を目指すそうです。
がん研究会がん化学療法センター基礎研究部の片山量平部長と東京大学大学院新領域創成科学研究科大学院博士課程の岡田康太郎氏らの研究グループは、ALK陽性肺がんにおいて、アレクチニブ‐ロルラチニブ逐次治療後の耐性機構として新規ALK重複変異体を複数発見しました。ロルラチニブ耐性変異に対して、既存のALK阻害薬クリゾチニブ(製品名:ザーコリ)、アレクチニブ、セリチニブ(製品名:ジカディア)、ブリグチニブ(製品名:ALUNBRIG)が再感受性を示すこと、すべてのALK阻害薬に耐性ができた場合でも、ABLを標的とするABL-TKIで克服可能であることを実験的に証明しました。
さらに研究グループは、京都大学大学院医学研究科の奥野恭史教授、同研究科の荒木望嗣准教授らとスーパーコンピュータ「京」を用いた共同研究を実施。従来の耐性変異や今回発見された重複変異と各ALK阻害薬との結合に関するシミュレーションを行ったところ、先の実験的データとシミュレーション結果との間に高い相関があることを確認し、コンピュータを用いた耐性変異予測の可能性を示すことに成功しました。
今回の成果について、研究グループは次のように述べています。「本研究から、様々なALK阻害薬耐性機構と耐性克服法の候補が示され、治療耐性時に耐性機構が明確にできると、そのメカニズムに合わせた更なる治療の可能性が示されました。将来的にはさらなるシミュレーションの予測精度向上により、コンピュータ内で耐性変異と効果的な薬剤の予測が、可能となると期待されます」