ビジンプロ新発売、EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がんの1次治療薬として

2019/03/12

文:がん+編集部

  EGFR遺伝子変異陽性の非小細胞肺がんの治療薬、ダコミチニブ(製品名:ビジンプロ)が発売されました。

ビジンプロとイレッサの直接比較試験のデータに基づき承認され発売

 ファイザー株式会社は3月1日、EGFR遺伝子変異陽性の手術不能または再発非小細胞肺癌の効能・効果で、EGFRチロシンキナーゼ阻害剤ダコミチニブを発売したことを発表しました。

 ダコミチニブは、2018年5月に国内で承認申請され、2019年1月に承認されていました。米国食品医薬品局でも2018年9月に、EGFRエクソン19欠失あるいはエクソン21L858R変異がある転移性の非小細胞肺がんの1次治療薬として承認されています。欧州医薬品庁でも2019年2月に、EGFR活性化変異がある局所進行または転移性非小細胞肺がんの成人患者に対する一次治療薬として肯定的見解を得ています。ダコチニブの承認は、ダコチニブとゲフィチニブ(製品名:イレッサ)を直接比較した国際共同第Ⅲ相ARCHER 1050試験に基づいています。

 ARCHER 1050試験>は、未治療のEGFR活性化変異(エクソン19欠失またはエクソン21のL858R変異)がある局所進行性または転移性非小細胞肺がんの患者さんを対象とした臨床試験です。1次治療の標準治療薬の1つであるゲフィチニブとダコミチニブを直接比較して、無増悪生存期間※1、奏効率※2、奏功期間、全生存期間※3が評価されました。

 その結果、ダコミチニブはゲフィチニブに比べて、無増悪生存期間を有意の延長し、疾患進行または死亡リスクを41%低下させました。全生存期間に関しては、ダコミチニブが34.1か月、ゲフィチニブが26.8か月で延長はあったものの、統計学的な有意差は認められていません。多く認められた有害事象は、下痢(87%)、爪の変化(62%)、発疹/ざ瘡様皮膚炎(49%)および口内炎(44%)でした。

 同社の取締役執行役員オンコロジー部門長の中村誠氏は、ダコミチニブの発売に際して「非小細胞肺がん治療では、個々の患者さんにあわせて薬剤を使い分け、患者さんに最大のベネフィットが得られるよう、治療シークエンスを考慮して長期生存を目指すことが目標となります。EGFR肺がん一次治療の新たな薬物選択肢として、ビジンプロを提供できるようになったことを大変嬉しく思います。今後も肺がん治療のパートナーとして、適正使用の推進に尽力し、個別化治療の進展に貢献してまいります」とコメントしています。

ARCHER 1050試験

対象:局所進行または転移性の非小細胞肺がん
条件:EGFR活性化変異(エクソン19欠失またはエクソン21におけるL858R変異)がある患者
フェーズ:第3相臨床試験
試験デザイン:無作為化、平行群間、非盲検
登録数:452人
試験群:ダコミチニブ
対照群:ゲフィチニブ
主要評価項目:無増悪生存期間
副次的評価項目:客観的奏効率、奏功期間、全生存期間ほか

※1:治療によって、がんが消失または30%以上小さくなった患者さんの割合のことです。
※2:完全奏効(CR)(腫瘍が完全に消失)と、部分奏効(PR)(腫瘍が30%以上小さくなる)を足して、治療患者の総数で割ったものです。奏効例(完全または30%の部分消失)で治療中にがんが進行せず安定した状態の期間のことです。
※3:患者さんの亡くなった原因ががんによるかどうかは関係なく、生存していた期間のことです。