HER2陽性乳がん治療薬トラスツズマブ デルクステカンFDA承認申請目標時期を前倒しに

2019/04/03

文:がん+編集部

 トラスツズマブ デルクステカンの米国承認申請目標時期が2019年前半に前倒しになりました。HER2陽性の再発・転移性乳がんに対する承認申請です。

HER2過剰発現の胃がん、国内でも先駆け審査に指定中

 第一三共は3月29日に、トラスツズマブ デルクステカンのHER2陽性の再発・転移性の乳がんに対する米国食品医薬品局(FDA)への承認申請目標時期が前倒しになったと発表しました。当初2020年とされていましたが、2019年前半になる見通しです。今回の申請は、グローバル第2相臨床試験DESTINY-Breast01試験に基づくものです。

 DESTINY-Breast01試験は、T-DM1(製品名:カドサイラ)を含む前治療を受けたHER2陽性の再発・転移性乳がん患者さんを対象とした治験です。T-DM1に抵抗性または不応となった患者さんにトラスツズマブ デルクステカンを、低・中・高用量の3つのグループに分けて投与し、有効性や安全性を評価しました。DESTINY-Breast01試験は患者登録が終了し、結果は学会で発表予定です。また、乳がん患者さんを対象としたトラスズマブ デルクステカンの2つグローバル第3相臨床試験、DESTINY-Breast02試験DESTINY-Breast03試験も2018年から開始されています。トラスズマブ デルクステカンは、乳がん患者さん以外にも、胃がん大腸がん非小細胞肺がんなども対象として積極的に開発が進められています。

 日本でも厚生労働省から、がん化学療法後に増悪したHER2過剰発現が確認された治癒切除不能な進行・再発胃がんに対する治療薬として先駆け審査指定を受けています。

DESTINY-Breast01試験

対象:切除不能・転移性乳がん
条件:HER2陽性の患者
フェーズ:第2相臨床試験
試験デザイン:非盲検、多施設共同
登録数:230人
試験群:トラスツズマブ デルクステカン低用量、中用量、高用量
主要評価項目:奏効率※1
副次的評価項目:奏功期間、病勢コントロール率、無増悪生存期間※2、全生存期間※3、薬物動態、安全性ほか

※1:完全奏効(CR)(腫瘍が完全に消失)と、部分奏効(PR)(腫瘍が30%以上小さくなる)を足して、治療患者の総数で割ったものです。奏効例(完全または30%の部分消失)で治療中にがんが進行せず安定した状態の期間のことです。
※2:奏効例(完全または30%の部分消失)で治療中にがんが進行せず安定した状態の期間のことです。
※3:※3:患者さんの亡くなった原因ががんによるかどうかは関係なく、生存していた期間のことです。