CAR-T細胞療法キムリア、メディアセミナー開催

文:がん+編集部

 CAR-T細胞療法チサゲンレクルユーセル(製品名:キムリア)のメディアセミナーが開催されました。びまん性大細胞型B細胞リンパ腫および小児急性リンパ性白血病に対する治療法と課題に関しての講演が行われました。

キムリア、有効性は高いが、品質担保、製造の複雑性、安全確保が課題

 ノバルティスは4月18日に、CAR-T細胞療法チサゲンレクルユーセル(製品名:キムリア)が、再発または難治性のCD19陽性B細胞急性リンパ芽球性白血病、および、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫に対する治療薬として厚生労働省から承認を取得したことを受け、「国内初のCAR-T細胞療法キムリア~再発・難治性ALLおよびDLBCL患者さんへ新たな治療選択肢~」と題したメディアセミナーを開催。北海道大学大学院医学研究院教授の豊嶋崇徳先生と京都大学医学部附属病院小児科講師の平松英文先生による講演が行われました。

 豊嶋崇徳先生は、再発・難治性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫に対するアンメットメディカルニーズと、チサゲンレクルユーセルの有効性および安全性、CAR-T細胞療法の展望に関して講演をされました。

 「びまん性大細胞型B細胞リンパ腫は、悪性リンパ腫の約30~40%を占める最も頻度の高い病型です。抗がん剤や抗体療法で約半数の患者さんは治癒しますが、再発・難治性の患者さんの治療は大変厳しいものです。CAR-T細胞療法キムリアは、そうした他に治療手段のなかった患者さんを救える可能性のある、いままでなかった治療です。しかし、テーラーメイドの治療であるため、製造の待ち時間、製造不良のリスクもあり、治療を受けられない場合もあります。また、サイトカイン放出症候群、神経毒性、血球減少、低ガンマグロブリン血症などさまざまな副作用もあり、それなりの覚悟が必要な治療でもあります。副作用のコントロールも含めて、経験のある専門医による慎重な適応判断が必要です」と、豊嶋先生は講演の中で話されました。

 平松英文先生は、再発・難治性の小児急性リンパ性白血病に対するアンメットメディカルニーズと、チサゲンレクルユーセルの有効性および安全性に関して講演をされました。

 「ELIANA試験に登録された日本人患者さんにおいてもキムリアは、6例中4例が寛解達成という高い奏効率を示しました。6例中5例で重症サイトカイン放出症候群を発症し、濃厚な治療が必要でしたが、全症例で治療に反応し、日本人患者さんでも有効性と安全性が確認されました。CAR-T細胞療法の課題は、治療の準備に時間がかかること、高額であること、有効性は高い一方で重篤な合併症が起こる可能性があること、無効例、再発例に対する治療がないことです」と平松先生は、講演の中で話されました。

 質疑応答では、CAR-T細胞療法のファーストラインでの治療法の可能性に関して、豊嶋先生は「びまん性大細胞型B細胞リンパ腫に関しては、ファーストラインで約半数の人が治癒する有効な治療法があります。安全性の面を考えると、CAR-T細胞療法は、ファーストラインで使われることはないと思います」と回答し、平松先生も「小児の急性リンパ性白血病に関しても、現在の標準治療の奏効率が非常に高いため、近い将来にファーストラインになることはないと思います」と回答されました。

 CAR-T細胞療法は、高い有効性はありますが、すべての患者さんに推奨されるものではなく、治療選択にあたっては慎重な判断が必要とのことでした。

 同社オンコロジージャパンプレジデントのブライアン グラッツデン氏は、CAR-T細胞療法チサゲンレクルユーセル特有の課題として、治療品質の担保、製造の複雑性、患者さんの安全の確保の3つを挙げました。

 治療品質の担保に関しては、「キムリアは患者さんの細胞を使った生きた細胞製品のため、製造不良により一定の製造基準に達しない場合もあります。そのため、品質管理体制が重要です」と、述べました。製造の複雑性に関しては、「キムリアの製造は非常に繊細で複雑なプロセスを要するため、大部分が手作業で行われています。そのため、製造能力の拡大には多くの検証作業が必要です」と、述べました。また、患者さんの安全の確保に関しては、「キムリアの治療では、重篤な副作用が起こることが想定されているため、患者さんの細胞採取の品質確保や投与後の副作用管理を綿密に行う必要がある。そのために、医療機関に対してトレーニングを実施し、キムリア治療を行う医療機関を認定するため、限られた施設での提供を予定しています」と述べました。

 CAR-T細胞療法チサゲンレクルユーセルの承認の基となった臨床試験は、JULIET試験とELIANA試験で、それぞれの結果は以下の通りです。

 再発・難治性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫患者さんを対象としたJULIET試験では、チサゲンレクルユーセルを投与して、全奏功率が評価されました。追加解析時点までに165名が登録され、111名が投与を受けた結果、主要評価項目の奏効率は、中間解析時点で58.8%(30/51名)でした。最も高頻度に認められた副作用は、サイトカイン放出症候群(58%、57/99名)で、そのうち重篤だったのは29%(29/99名)でしたが、死亡に至った例はありませんでした。高頻度に認められたその他の副作用は、発熱(25%)、低血圧(21%)などでした。

 再発・難治性の急性リンパ芽球性白血病小児を対象としたELIANA試験では、チサゲンレクルユーセルを投与して、全寛解率が評価されました。主解析時点までに92名が登録され、75名が投与を受けた結果、主要評価項目とされた全寛解率は、中間解析時点で82.0%(41/50名)でした。最も高頻度に認められた副作用は サイトカイン放出症候群(77%、58/75名)で、そのうち重篤だったのが63%(47/75名)でしたが、死亡に至った例はありませんでした。高頻度に認められたその他の副作用は、低γグロブリン血症(39%)、発熱性好中球減少症(27%)、発熱、低血圧(各25%)、頻脈(24%)、脳症(21%)、食欲減退(20%)などでした。