トリプルネガティブ乳がん、ヒアルロン酸が深く関与

文:がん+編集部

 予後不良の乳がんに、ヒアルロン酸が関わっている可能性があることがわかりました。

トリプルネガティブ乳がん、予防・治療法開発の可能性も

 東京大学は5月10日に、がんの発症・進展におけるヒアルロン酸の「ジキルとハイド的」役割として、予後不良なトリプルネガティブ乳がんに、ヒアルロン酸が深く関与していることを明らかにしたと発表しました。東京大学大学院医学系研究科の畠山昌則教授らの研究グループによるものです。

 細胞組織の構造維持や水分保持などに深くかかわっているヒアルロン酸は、美容資料や整形外科領域で投与が行われています。また、若返りや美容をうたい、ヒアルロン酸が使用されています。今回の研究は、こうした美容目的でのヒアルロン酸の安易な使用に警鐘を鳴らすものでもあります。

 研究グループは、このヒアルロン酸ががんを抑制する働きと、発症や進展を促す働きの、相反する2つの役割をもつことを明らかにしました。分子サイズの大きい「高分子量ヒアルロン酸」は、がんの抑制性細胞内シグナル経路であるHippoシグナル経路を活性化することで、がんを抑制する働きをします。一方で、高分子量ヒアルロン酸が分解されて生じる分子サイズの小さな「低分子量ヒアルロン酸」は、逆にHippoシグナル経路を不活化し、がんの発症や進展を促します。

 予後不良な乳がんとして知られるトリプルネガティブ乳がんでは、高分子量ヒアルロン酸の分解酵素であるHYAL2が過剰発現しており、多く作られるようになった低分子量ヒアルロン酸がHippoシグナルを抑制することで、がんの悪性度を増強していることも見出したそうです。

 このことから、ヒアルロン酸やHYAL2をターゲットすることで、トリプルネガティブ乳がんに対する画期的な予防・治療法開発の可能性が期待できます。