BRAF遺伝子変異陽性転移性大腸がん治験、3剤併用療法のORRとOSを達成

2019/05/29

文:がん+編集部

 BRAFV6000E遺伝子変異陽性の転移性大腸がんを対象とした治験の中間解析が発表されました。エンコラフェニブ(製品名:ビラフトビ)+ビニメチニブ(製品名:メクトビ)+セツキシマブ(製品名:アービタックス)併用療法が、奏効率(ORR)と全生存期間(OS)を達成しました。

ビラフトビ・メクトビ、がん増殖シグナル伝達経路のMARK経路を2重で阻害

 小野薬品工業株式会社は5月22日に、BRAFV6000E遺伝子変異陽性の転移性大腸がんを対象としたBEACON CRC試験の中間解析で、エンコラフェニブ+ビニメチニブ+セツキシマブ併用療法が、主要評価項目である奏効率および全生存期間を達成したと発表しました。

 BEACON CRC試験は、1~2レジメンの治療後に病勢進行したBRAFV6000E遺伝子変異陽性の転移性大腸がん患者さんを対象としたグローバル無作為化非盲検の第3相臨床試験です。登録された30人の患者さんのうち29人がBRAFV6000E遺伝子変異陽性で、1人がDNAミスマッチ修復機構欠損による高頻度マイクロサテライト不安定性を保有していました。30人の患者さんが、エンコラフェニブ300㎎(1日1回)、ビニメチニブ45㎎(1日2回)、セツキシマブの3剤を併用したトリプレット療法を受け、奏効率が3剤併用26.1%、対照群1.9%、全生存期間が3剤併用9.0か月、対照群5.4か月という結果で、統計学的に有意な改善を示しました。(対照群は、セツキシマブとイリノテカンを含む併用療法群。)

 エンコラフェニブはBRAFキナーゼ阻害薬で、ビニメチニブはMEK阻害薬です。両剤ともMAPKシグナル伝達経路における重要な酵素が標的です。MAPK経路は、がん細胞の分化や増殖で重要なシグナル伝達経路です。細胞膜上の増殖因子受容体に増殖因子が結合することで、細胞増殖シグナルが核に向けて伝達されます。伝達経路は、RAS→BRAF→MEK→ERK→核と順番に伝達されますが、RASからBRAFを飛ばしてMEKへバイパス経路で伝達されることもあります。エンコラフェニブは、このMAPK経路の内BRAFを阻害することで、ビニメチニブはMEKを阻害することで抗腫瘍効果を発揮します。

 テキサス州立大学MDアンダーソンがんセンターCancer Medicine部門、消化器腫瘍内科のScott Kopetz准教授は「BEACON CRC試験は、BRAFV600E遺伝子変異陽性のmCRC患者を対象とした初めての第3相試験です。今回の結果は、この患者集団において現在の標準治療の選択肢と比較して有意な改善を示しました。この患者集団に対して、現在、米国食品医薬品局(FDA)が承認した治療がないことを考慮すると、BEACON CRC試験の結果は医療現場を変えていくものと確信しています」と述べています。

 エンコラフェニブとビニメチニブは、米アレイ バイオファーマ社が開発しており、日本と韓国での開発と商業化する権利を小野薬品がライセンス契約により取得しています。