肺がん、ゲノム医療の新たな展開

2019/06/14

文:がん+編集部

 コンパニオン診断システム「オンコマイン Dx Target Test」が6月1日に保険収載されました。肺がんでも、ゲノム医療がますます推進されます。

ゲノム医療、遺伝子解析に基づき有効な治療薬を患者さんへ届けること

 ノバルティスは6月10日に、サーモフィッシャーサイエンティフィック ジャパングループと共催で、「肺がん診療におけるゲノム医療~新たな展開へ~」と題したメディアセミナーを開催。サーモフィッシャーサイエンティフィックのコンパニオン診断システム「オンコマイン Dx Target Test」が6月1日に保険収載されるなど、肺がんのゲノム医療は活発に進展しています。一方で、情報が整理されないまま国民に届いている現状もあります。今回のセミナーは、そのギャップを埋めるために開催され、東京大学大学院医学系研究科特任教授の佐々木毅先生と国立がん研究センター東病院呼吸器内科長の後藤功一先生を招き、講演が行われました。

 佐々木毅先生は「コンパニオン診断と遺伝子パネル検査―ゲノム医療のupdateに含めて」と題して講演。講演の中で佐々木先生は、がんゲノムプロファイリングとコンパニオン診断の違いや、日本におけるがんゲノム医療の展望についてお話をされました。「遺伝子パネル検査やコンパニオン診断は、新たな治療法を見つけるために行います。遺伝子パネル検査では、標準治療がなくなった後で患者さんが、わらにもすがる思いで検査を受けます。そのため、迅速に正確な診断結果を出すことが求められます。また、遺伝子パネル検査では、多くの遺伝子を調べますが、新たな治療法が見つかる確率は高くありません。また、確立した治療法でもありませんが、臨床試験として治療を受けられる可能性はあります。一方のコンパニオン診断は、診断結果が承認薬による治療に直結していますが、従来のコンパニオン診断は、段階的に検査を行なっているため診断がつくまでに時間がかかり、また、何個も検査をするため、十分な量の検体が得られない可能性があります。今回新たに承認されたコンパニオン診断は、4つの遺伝子検査を同時に行えるため、再生検など患者さんの負担が増すリスクも軽減でき、検体量も少なくてすみます。」(佐々木先生)

後藤功一先生は「肺がんの遺伝子変化を標的とする有効な治療薬を患者さんへ届ける!~肺がんにおけるコンパニオン診断と個別化医療~」と題して講演。講演の中で後藤先生は、次世代シーケンサーによるマルチコンパニオン診断の導入により、新たな進展が期待される肺がん診療におけるゲノム医療への期待と課題、さらに次世代シーケンサーによるコンパニオン診断検査と、各種プロファイリング検査の臨床的位置づけに関してお話されました。「ゲノム医療は、遺伝子解析に基づいて、有効な治療薬を患者さんへ届ける医療です。真の目的は、遺伝子検査をすることではなく、有効性の高い治療が可能になることです。コンパニオン検査は、治療薬と1対1で、承認された治療薬が投与可能です。一方の遺伝子パネル検査は、標準治療が完了後、未承認薬などを臨床試験などで検討する可能性を求めて行うものです。遺伝子検査ができても、有効な治療薬が届かなければ、医療とはいえません。そのため、ゲノム医療の主体は、現在のところコンパニオン検査と考えています。」(後藤先生)