カフェで学ぼう女性のカラダ「女性特有の病気について」

提供:NPO法人ウィッグリング・ジャパン


渡海 由貴子先生
講師:いまむらウィミンズクリニック乳腺外科医   渡海 由貴子先生

 今は人生100年時代。生き方も様々になってきた人生100年時代の女性の話を、いまむらウィミンズクリニック乳腺外科医 渡海 由貴子先生にお話しいただきました。

女性のライフサイクル“昔といま”

 昔の女性は、若い頃から子どもを何人も産むので月経は飛び飛びにしかきませんでした。今は初経が早く始まり、初産が遅く、出産回数が少なくなっています。しかし、閉経の時期はかわらないので月経にたくさんさらされている状況です。そのため月経に伴うホルモン変動に左右されているのです。

女性の妊娠出産に関する誤解

 女性は、50歳ぐらいまで赤ちゃんを産めると思われている方が多くいます。女性の妊娠や出産に対する誤解は色々あります。

月経が始まってから中で卵子が作られるのかな?
月経があるうちは妊娠できるよね
自分の努力次第で妊娠できるよね
体外受精すれば何歳でも妊娠できる
これらは全部ウソです。

 最終妊娠年齢と閉経年齢ですが、日本では51歳が閉経年齢の平均になります。最終妊娠年齢は閉経年齢の10年ぐらい前が限界だといわれているので、51歳が閉経年齢とすると41歳までが最終妊娠年齢というデータがあります。

 卵巣は年齢とともに枯れていきます。産まれたときは200万個あった卵子が、50歳になると200個ほどになります。また、卵子の数と質は37歳くらいで急激に低下するので、妊娠適齢期は20歳〜30代前半ということが言えます。将来子どもを持ちたいと思う人は、遅くとも37歳くらいまでに産むことをお薦めします。これは生物学的に仕方のないことなのです。

女性のライフステージとホルモン

 女性というのはホルモンに非常に翻弄されるジェンダーです。小児期→思春期→性成熟期→更年期→老年期とホルモンの移り変わりに伴う病気が多くあります。

 がんについては、性成熟期に入ると子宮頸がんのリスクがグッと高まります。年齢を重ねるにつれて子宮体がん、乳がん、卵巣がんが増えてきます。

 女性ホルモンには、「エストロゲン」と「プロゲステロン」という2種類のホルモンがあります。

「エストロゲン」

 卵子がいい精子を迎えるといいいなぁというお布団を重ねる(子宮内膜の増殖)イメージ。美人ホルモンと言われ、女性らしい体つきや肌のつや、自律神経の安定などポジティブな方向に働いています。

「プロゲステロン」

 布団乾燥機でお布団をホカホカにするイメージ。ブスホルモンと言われ、むくみやイライラ、肌荒れなど、いわゆる生理前状態を作ります。

 それぞれ子宮内膜に関して働いています。「エストロゲン」と「プロゲステロン」は、両方ともないと生殖ができません。女性はこの2種類のホルモンに翻弄されています。

 ホルモンが及ぼすからだへの影響については、月経からエストロゲンが上がっていく時期を経て排卵があり、そのあとは黄体期というプロゲステロンの働く期間があり、それからまた月経がくると、基礎体温は低温から排卵を境に高温になるということになります。心の変化としては、月経前の1週間はジトーと根暗系の女子になり、月経が済んだらキラキラになって、排卵の後はちょっとまじめな感じになります。次の月経前や月経中になるとイライライライラして猛獣っぽくなってしまう方が多くいます。こういった感じで、女性のこころとからだは毎月一定のリズムを刻んでいます。

女性ホルモンと乳房

 乳房の張りや、痛みで受診される患者さんは非常に多くいます。

 これは、プロゲステロンの仕業であることがほとんどです。排卵日以降多くなるプロゲステロンは、水分をからだの中にため込む性質があり、子宮だけでなく乳腺にも働きかけて、浮腫をおこします。

 これが、“胸のしこり感”や“痛み”を感じる正体です。乳腺は月経3〜4日前から月経開始まで最も張りが強くなり、終了時ごろに元に戻ります。月経前症候群の乳房痛には低用量ピル、漢方No.24などが奏功することも多くあります。

子宮頸がん

 1年間に子宮頸がんで亡くなる日本人の女性は、3,000人もいます。1日にすると10人。30〜40代が多く、近年は20代も増加傾向にあります。

 子宮頸がんはヒトパピローマウィルス(HPV)が原因になって起こります。非常に稀なケースを除いてほとんど100%といってもいいくらいです。これは実に9割ぐらいの方がHPVを持っていて感染したことです。しかし、HPVに感染しても多くの人は自己免疫によりウィルスを排除します。約10%の人がウィルスを排除できず持続感染を起こし、異形成や子宮頸がんへと進行していきます。HPV感染後、平均6年〜10年かけて一部ががんへ進行していきます。なので、初めて性交渉を持つ前にこのウィルスに対する免疫をつけておけば排除される方向に行くため、ワクチンが推奨されるのです。

 子宮頸がんの予防は、ワクチンと子宮頸がん検診です。自治体によっても少し違いますが、小学校6年生から高校生1年生までの女の子は、自治体の補助があり無料でワクチンを接種できます。基本的には3回打たないといけませんが、現在ワクチン接種の推奨がストップしています。

 新たに子宮頸がんと診断される人は、年間約1万人、上皮内がんを含めると3万人以上います。子宮の入り口を取ってしまう人が1万3千人います。子宮の入り口を取ると、流産や早産のリスクが高くなります。せっかく妊娠できても赤ちゃんを産めないということにもなるのです。

 日本で使われているHPVのワクチンには2価と4価があり、これで救える命が2,500人いると推定されます。がんを免れる人が7,000人。子宮の入り口を取らなくていい人が6,300人となるので、副作用かどうかわからないものでワクチンを辞めてしまうのは如何なものかと私は思います。

 今、世界の流れは「9価といういろいろなウィルスに対応できるワクチンがあり、それとがん検診で子宮頸がんは撲滅できる」とWHOは言っています。しかし、日本みたいな国があるのでなかなか進まない状況です。日本のHPVワクチンの接種率は2010年から2013年ぐらいまでは政府の推奨があったので受けている方が多かったのですが、その後に産まれたお子さんはワクチンを接種していない方が非常に多くいます。そうすると来年以降、この世代が18、19歳になるため、パンデミック(広範囲に及ぶ流行)となり、感染者がまた増えるであろうと言われ非常に嘆かれています。女子のように子宮は失いませんが、感染源撲滅のため、男子にも接種している国はたくさんあります。

参加者と先生の質疑応答

Q.高校1年生と20歳の娘がいます。20歳の娘のときは、ワクチン接種が推奨されていたので何の疑問も持たず接種しました。高校1年生の娘はまだ接種していないのですが、先生のお話や最近のメディアなどでワクチンを推奨されているので受けるべきか迷っています。

A.公平な立場から言いますと、受けるべきだと思います。ワクチン接種の副作用で痙攣するなどの報道をご覧になったことがあると思いますが、若い女の子や男の子は針を刺されただけでも痙攣が起きる場合があります。それは、精神的なダメージと痛みに対する激しいリアクションで痙攣が起こるのです。ワクチンを接種する群と接種しない群とに分け、長野県や新潟県で研究を行なっています。ワクチンを打ったからといって痙攣する数が増えたというデータにはなっていません。接種せずに針を刺すだけという実験を人に行うのはなかなか難しいのですが、こういった研究結果をうけて医学会の中ではワクチン接種と重篤な副反応には関連がないものとして扱われています。20歳のお嬢さんのときも針を刺されて痛かっただけで何も起こらなかったと思います。私にも中学2年生の娘がおり、今、2回目まで打ったところです。

Q.ではなぜ国はワクチン推奨を中止しているのですか?

A.以前、センセーショナルな報道があったからです。ワクチン反対の声というのは結構大きくて、「因果関係が“ある”とも証明できないけれど、“ない”とも証明できないじゃないか」と言われます。村中璃子先生が訴訟を起こしたとき、科学者であるなら論文や学会発表などで反論するべきなのに、名誉毀損で訴えるなどして、まだまだ揉めている状況が続き厚労省が二の足を踏んでいます。

Q.高校3年生の娘がいます。子宮頸がんワクチンを接種するのはもう遅いですか?

A.自治体の補助の対象からは外れますが、感染していても今はまだ次の段階に進んでないということであれば、おおいに接種する価値はあります。子宮頸がんワクチンはハイリスク型HPV群にしか対応はできませんが、それでも6〜7割の方はがんになることを免れるので接種するべきだと思います。

 実はワクチンを受けると製薬会社と医者が儲けるのではないかなどと、いろいろな話をされますが全くそういうことはありません。むしろ説明などに時間を要するので「接種しないほうがいいですよ」とお伝えした方が医者としては楽です。ですが、そうなると次の世代の日本が少子化に輪をかけてしまいます。

Q.中学生の娘がいます。まだ性に向き合うということを親子でできず、どのようにすればよいかアドバイスが欲しいです。

A.1つのきっかけは子宮頸がんワクチンを接種するタイミングがいいのではないでしょうか。なぜ予防接種をするのか子どもも納得しないといけないし、「これは将来あなたに恋人ができたときにウィルスをもらうかもしれないから、それに対する予防なのよ」と説明してあげるとよいかと思います。まだピンとこないかもしれませんが、私の子どもも幼いので全くピンときていません。学校行事と月経が重なって大変なときに、安全な方法で楽に乗り切れるということを淡々と説明しています。まだ月経の周期も安定しないし、子宮も卵巣も安定していませんが話はしています。

Q.高校2年性の娘がいます。卵やピーナッツなどアレルギーがあるので、不安でワクチンを受けていません。アレルギーがあっても大丈夫しょうか?インフルエンザの予防接種は受けたことがあり、アレルギーはでませんでした。

A.アレルギーは、すべての薬剤に対して同じように起こる可能性があります。インフルエンザワクチンの場合は卵アレルギーを引き起こす可能性がありますが、子宮頸がんワクチンは一般的なタンパクに対するアレルギーはあまり起こりません。アレルギーが起こる確率というのがおそらく何万分の一でしょう。それに対して自分の子宮を守るメリットを比較してどちらを選ぶかということになります。ただ、実際にHPVウィルスに感染したときはアレルギーが起こるかもしれません。どちらが安全かというと、接種していたほうが安全だと私は思います。まずどんなアレルギーをお持ちなのか、小児科の先生に相談されたほうがいいでしょう。

 子宮頸がんでは毎年3,000人もの人が命を落とされています。ワクチンと検診できちんと予防できるがんです。検診でも、もちろん早く発見することはできるのですが、発見されたときに子宮の入り口を切除する手術を最低限しないといけません。このことは赤ちゃんを産むときにはデメリットになります。そういったことも踏まえて考えて欲しいです。

Q.息子もいるのですが、男の子もHPVウィルスを持っているのですか?

A.男の子も持っています。男の子の場合はHPVウィルスを持っていてもがんになることはありません。しかし、ペニスの先がカリフラワーのようになる性感染症の尖圭コンジロームは、HPVウィルスが原因になることはあります。ですので、尖圭コンジロームを予防する目的で男の子が接種している国もあります。

Q.1年前に乳がんになり、手術をしました。抗がん剤、放射線治療を行い、その後、いろいろな副作用が出ました。主治医の先生は手術もすごく上手な先生だと思うのですが、なかなかうまく付き合うことができません。定期的に受診し、副作用のことなどを相談しても患者に寄り添ってくれていないように感じます。どう主治医の先生と付き合っていけばいいのか困っていて、失礼ながら先生を変えることの選択肢も必要かと思っています。今後、10年ぐらい治療していかないといけないので付き合いが長くなるので困っております

A.明確な答えを差し上げることはできませんが、医者と患者さん、やはり人間対人間なのでどうしても相性というのはあります。医師のキャラクターもいろいろなので、この先生のところに通ったら私は後悔すると思わるのであれば、セカンドオピニオンに行かれたらいいと思います。

参加者の感想

 22歳の娘がいます。私の年代はピルと聞くと怖い薬というイメージがあり、家族の中で、話題にしたこともありませんでした。娘は知っているかもしれませんがアフターピルについては初めて知りました。これは母親として知っておかないといけないことだなと思いましたので、私の周りの知らない人へ伝えていきたいです。

 HPVワクチンについて、うちの子の世代もセンセーショナルな報道を受けて接種していません。私も色々なセミナーに参加させていただく機会があって、ワクチンは接種した方がいいよと先生方はおっしゃっていますので、働いていてなかなか時間を取れないようですが、ぜひ娘には打たせたいなと思っています。それと息子もおりますので男女一緒にワクチンを打つのが当たり前の日本になればいいなと思いました。

 HPVワクチンと低用量ピルの正しい知識が得られて良かったです。18歳の娘がいます。早速ワクチンを受けさせたいと思いました。

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NPO法人ウィッグリング・ジャパンでは、がん闘病中にかつらをレンタルするというサービスを提供することで、2010年から8年にわたり、約800名の女性がん患者さんをサポート。同じ経験をしたスタッフが患者対応するというピアサポートを取り入れることで、心のケアにも注力しています。