カフェで学ぼうがんのこと「肺がんの現状 ~オプジーボは肺がんに効果的?~」

提供:NPO法人ウィッグリング・ジャパン


東公一先生
講師:久留米大学医学部内科学講座呼吸器・神経・膠原病部門講師 東公一先生

肺がんは近年、男性女性関係なく非常に増えてきている疾患で、今後もまだ増加する傾向にあります。罹患率が高く、胃がんのように切ると治るというものではないため、再発を繰り返す場合が多くあります。そういったことから肺がんが女性においても男性においても死亡率が上位になっているのです。

5年の生存率を比べてみると、胃がん、大腸がんにおいては7、8割に対し、肺がんにおいては44%と非常に低くなります。※1

「がん」とは正常な細胞が異常化し、増殖をくりかえしてだんだん増えてきます。肺がんの原因として一番多くあげられるものがタバコです。最近のタバコのフィルターは性能が良く、煙が肺の端っこまで入ってきます。タバコを吸わない女性でも肺がんになることが多く、問題になってきています。

肺がん理解のための基礎知識

肺の構造
肺は呼吸によって酸素を取り入れ、二酸化炭素を排出する臓器です。2つあって右は上葉、中葉、下葉に分かれており、左は上葉、下葉に分かれています。例えば手術をする場合、上葉だけをとるとか中葉だけとることになります。肺は胸膜という膜で囲まれています。胸水というのは、肺の中に溜まる水ではなく、肺と胸膜の間に溜まる水を言います。

気管組織の構造と機能
肺は気管から分岐してぶどうの房(肺胞)のようないっぱいの集まりからできています。口や鼻から吸われた空気は、気管、気管支と細かく枝分かれをしていく気道を通り、肺胞に到達します。肺胞では、張り巡らされた毛細血管を通じて、「血液中の二酸化炭素」と「吸い込んだ空気中の酸素」が交換されています。

肺組織とリンパ節
リンパとよく言われますが、リンパとは「病気の通り道」のことです。このリンパに病気が入ってしまうと病気は全身に広がってしまいます。そういう意味でリンパに広がるということはあまりいいことではありません。がんが進行するとリンパ節が腫れたり、リンパ節に転移したりすることがあるため、リンパ節の状態を知ることは大切です。

◎リンパ節とは
・リンパ節は、身体のいろいろな所にあって免疫を司る役割をしています。
・リンパ節の中には、リンパ球がたくさん集まっています。
・リンパ節は身体の外から細菌などが侵入したときに、そこで細菌と戦って食い止める役割を果たしています。

肺がんの広がり方には、血液に入っていく方法とリンパに入る方法があります。ある部分にがんができるとそこからリンパを通り、リンパにつながる血管から全身に血液を通って広がったり、肺にできたがんがいきなり血管に入って広がる場合もあります。

肺がんの検査

検査についてはいろいろな検査があります。

・レントゲン
・CT
・MRI
・気管支鏡
・胸腔鏡
・腫瘍マーカー
・喀痰の検査
・CTガイド下針生検
・エコー
・縦隔鏡
・骨シンチ
・PET検査

最近はCTとPET検査が主流です。PET検査とは、基本的にがん細胞は砂糖が大好きなので砂糖に放射能を含む薬をくっつけます。そしてご飯を食べないカラカラの状態にして、注射を打つとがんは砂糖が好きなので集まってきます。この特性を利用して撮影します。

検査では組織学診断がとても大切です。腺がん、扁平上皮がん、大細胞がん、小細胞がんそれぞれに特性があり、治療が全く変わってくるので組織を調べることは非常に大事になってきています。

こういう風にいろんな検査と病理検査を組み合わせてがんのリンパへの広がり、全身への広がりを見て、I、II、III、IVとステージを決めていきます。ステージはIVまでで、「IVになったら終わりですか?」とよく聞かれますが、そういうことではありません。ステージはあくまでも治療方針を決めるための目安です。

がんの代表的治療法

がんの治療には「外科療法(手術)」「化学療法(抗がん剤)」「放射線療法」があり、2年ほど前からついに「免疫療法」が入ってきました。肺がんも組織、ステージに分けて治療を決めていきます。

(1)外科療法(手術)
がんの広がりはリンパを通っていくので一部分をとっても全部をとりきれない可能性があります。だから、肺がんはリンパの広がりまで考慮して大きく切っていきます。上葉、中葉、下葉に分けてがんのできている部分とリンパを一介にしてとっていくのが標準治療です。リンパ節を切除するのは転移しているかどうかを調べるためでもあります。

(2)放射線療法
がんの大きな部分に放射線をあてます。全部消すための治療もあれば、骨や脳に転移してその症状をとるためのものなど、使い方によっていろいろな用途があります。昔は定規で測って目安をつけてあてていましたが、今はCTをとってどういう方向にあてたら患者さんの身体に被爆が少ないか、より身体にダメージが少ないか、ということをデザインして行なっています。

(3)化学療法(抗がん剤)
基本的に手術ができない人が適用になります。抗がん剤に関してもいろいろな使い方があります。手術の前にがんを小さくするため、全部切った後に目に見えないがんが残っている可能性があるため、再発したとき、全身に広がっているから…など。昔の抗がん剤はやみくもに、どんな人でも同じ治療で選択性がないものでした。「毒をもって病気を制す」といったものでダメージも多くありました。最近では悪い原因を調べて薬をデザインするようになってきています。それが分子標的薬といいます。

遺伝子が悪さをし、がん化していくという場合もあります。今は日本人の腺がんの4割にみられるEGFRという遺伝子変異や、ALK、ROS1という遺伝子などを調べて治療が始まります。肺がんと診断されたら全員に遺伝子検査を行い、遺伝子変異にあわせてどういう治療をするかを決めていきます。ただ、全員に遺伝子変異があるわけではありません。そして、遺伝子変異がない方には免疫療法が効きやすいということも分かってきています。

がん免疫療法

昔はリンパ球が元気になる物質をかけて攻撃させるものでした。最近よくクリニックなどではリンパ球をたくさん増やし、身体に返しています。これらが一般的に言われている免疫療法です。攻撃力を増していくという物量戦でした。

最近では、やみくもに増やすのではなく、がん細胞が何で攻撃できなかったかに注目をした「免疫チェックポイント阻害剤」が出てきました。

正常に免疫が働いている場合はがん細胞がいたらそれを認識して攻撃をするというサイクルが回っています。人間の身体は1日に何万回も細胞分裂を行っているため、その細胞分裂の中でがん細胞のようなエラーを絶えず攻撃しています。だから免疫機構がはたらいている人はがんになりません。

ただ、がん細胞も賢く、自分を攻撃できないようにすることがあります。どんなことをしているかというと、本来はリンパ球が活性化して攻撃するはずです。それをがん細胞の表面にPD-L1という物質を出して自分を攻撃できなくしてしまいます。まるでバリアをはっているかのように。

今まではひたすら攻撃させていましたが、がん細胞がバリアをしていることが分かったので、それをとってしまえば攻撃ができるのではないかというのが、免疫チェックポイント阻害剤の作用になります。なので、免疫チェックポイント阻害剤が直接がん細胞を攻撃するのではなく、結局攻撃するのは自分の免疫です。これが免疫チェックポイント阻害剤の作用です。

5年前に人に初めて投与されました。がんが全身に広がった4期肺がんの場合、5年生きられる確率は5%あるかないかぐらいです。それが5年間投与して16%という結果がでました。10%というとすごい数の人が助かることになります。

免疫チェックポイント阻害剤の効果

奇跡を起こしうる薬だと思いますが、全員に効果が見られるわけではなく今のところ2割ほどです。効果がでるとそれが2年ぐらい続きます。それが免疫チャックポイント阻害剤のすごいところでもあります。

副作用については、全員ではありませんが様々な副作用が起きます。その理由は、がん細胞が攻撃から逃れる機能を抑えているため、本来は攻撃しない正常な細胞まで攻撃してしまう可能性があるからです。

この薬は高額です。ほとんどが高額医療として税金に頼っています。今は国の試みとして効く人を見つけようとPD-L1がどのくらいがん細胞に発現しているかを測るようになりました。この物質が沢山でている人ほど効くという結果がでています。

がんになったらPD-L1という物質を測ってから免疫チェックポイント阻害剤を使うようにしましょうといわれています。

免疫チェックポイント阻害剤の課題

1:費用が高額
バイオマーカーの開発が急務となっています。しかし、いつまで投与するのかが問題です。1年では再発する可能が高いのでやめないほうが良いというデータは出ています。

2:副作用の頻度と対策
早めに気づいて対応することが大切になってきます。

まだまだ免疫チェックポイント阻害剤はこれからも沢山出てきます。オプジーボ、キイトルーダについでもう一つアテゾリズマブ※2という薬が承認されつつあります。夢の薬ではあるけれども全員にとまではかないのが現状です。

感想など

肺がんがなぜ、罹患率、死亡率が高いのか原因が良く分かりました。また、よい薬がでてきても、結局は普段から自分の免疫力を高めたり、健康な生活習慣を送ることが何より大切な事だと改めて思いました。

※1全国がん(成人病)センター協議会の生存率共同調査(2017年7月集計)による。
※2アテゾリズマブ(製品名:テセントリク)は、2018年1月に承認されました。

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