5GとAIで革命をもたらす医療最前線-Rakuten Optimism 2019レポート
2019/08/05
文:がん+編集部
楽天グループ最大規模のイベント「Rakuten Optimis 2019」が開催されました。医療に関連して、「5GとAIで革命をもたらす医療最前線」をテーマに、光免疫療法開発者の小林久隆先生、iPS細胞開発者の山中伸弥先生らによるパネルディスカッションが行われました。
光免疫療法、iPS細胞開発者、がん医療最前線語る―パネルディスカッション
7月31日~8月3日にパシフィコ横浜で行われた「Rakuten Optimism 2019」。「5G時代を、先取りしよう。」をテーマに、講演やパネルディスカッション、入場無料のイベントなどを通じて最先端の世界が紹介されました。
8月2日、「5GとAIで革命をもたらす医療最前線」と題したパネルディスカッションが行われました。ここでは、光免疫療法の開発者で米国がん研究所主任研究員の小林久隆先生、iPS細胞を開発した京都大学iPS細胞研究所所長の山中伸弥先生、南カリフォルニア大学エリソン・インスティテュート創業者兼CEOのデイビッド・B・エイガス氏、楽天株式会社執行役員CEO戦略・イノベーション室オフィスマネージャーの古橋洋人氏が登壇。この名だたる顔ぶれは、グループの楽天メディカル社で光免疫療法を開発中ということから実現したものです。
「がんは、やっつけたい病気。1980年代には、がんのメカニズムや関連遺伝子などが解明されつつあり、2000年ごろまでにはがんは克服できているのではないかと思われていました。しかし、2019年になってもいまだに手ごわい病気です」と、山中先生。続けて、自身が研究開発に携わるiPS細胞を用いたがん治療について話しました。
「第4のがん治療として、がん免疫療法が注目されています。今、私たちが開発しているのは、iPS細胞からがんを攻撃する免疫細胞をつくり、患者さんに戻してがんをやっつける治療法です。CAR-T細胞療法は、一部の白血病への適応で米国、日本で承認されています。ただし、CAR-T細胞療法は、1回の治療で数千万円の治療費がかかるため、クローン化したiPS細胞を使ってコストを抑える治療法の開発にも取り組んでいます」。
また、現在は、iPS細胞から血小板や赤血球などの血液細胞を作る開発にも取り組んでいるという山中先生。「手術、放射線、化学療法など、がんの治療には、貧血を伴います。iPS細胞由来の血液が作れれば、安定した血液の供給につながる可能性があります」と話しました。
小林先生は「がんは、体の中に余計な細胞ができてしまっている病気。がんの3大治療(手術・化学療法・放射線療法)は、余計な細胞を取り除くということで理にかなっています。しかし、この3大治療は、人にとって大切な免疫力も落としてしまっていました。がん細胞を取り除きつつ、免疫を維持または高める必要があります」と現状にふれつつ、続いてがん治療における光免疫療法の新しいメカニズムなどを話しました。
「光免疫療法は、まずがん細胞だけに死んでもらい、さらに免疫を若干ですが、上げることができます。今後は、治療後の免疫強化、がん細胞の免疫抑制を解除することで、両方の治療の良いところを生かせると考えています。がんで死ななくても、人間はいずれ死にますが、がんで死なない時代は、そう遠くない将来に実現できる可能性があるかもしれません。すべてのがんを治すのはまだ難しいですが、治療法はどんどん進歩しています」。