肺がん増殖に関わる、極めて重要なRNAを発見

2019/08/09

文:がん+編集部

 肺がん細胞の増殖に関わる、タンパク質に翻訳されないRNAが発見されました。このRNAを標的とする新たな阻害薬の開発が進んでいます。

ノンコーディングRNA「MYMLR」を標的とした肺がんの新薬開発に期待

 肺がん細胞の増殖において極めて重要な、タンパク質に翻訳されないRNA(ノンコーディングRNA)が発見されました。これは愛知県がんセンター分子診断トランスレーショナルリサーチ分野の梶野泰祐主任研究員と高橋隆総長らの研究グループと、名古屋大学の島村徹平教授、東京大学医科学研究所の宮野悟教授らとの共同研究によるものです。

 ゲノム研究の進歩により、細胞内にあるタンパク質に翻訳されないままRNAとして機能する長鎖ノンコーディングRNAが数万種類も発現していることがわかっています。さらにタンパク質と長鎖ノンコーディングRNAに、複雑な生後関係が存在することが明らかになってきたことで、長鎖ノンコーディングRNAによる制御機構の破綻が、細胞のがん化に関わっている可能性も示唆されています。

 研究チームは、代表的ながん遺伝子として知られているMYCに着目。これは肺がん細胞の増殖に必須な転写因子でもあります。スーパーコンピュータ「京」を使って肺がん患者さんのがん細胞の遺伝子発現情報を解析したところ、新規の長鎖ノンコーディングRNA「MYMLR」を発見しました。このMYMLRは、MYCの発現維持に必要で、肺がん細胞の増殖に重要な働きをすることもわかりました。さらに研究チームは、MYMLRと結合するタンパク質としてPCBP2を同定。このPCBP2とMYMLRが結合することで、MYCの転写を制御していることも解明したそうです。

 今回、MYMLRの肺がん細胞の増殖に関わるメカニズムが解明されたことで、MYMLRを標的とする革新的な治療薬の開発が期待されます。