リムパーザ+アバスチン併用、進行卵巣がんの治験で無増悪生存期間を延長
2019/09/06
文:がん+編集部
進行卵巣がん患者さんの初回治療後に対する維持療法として、オラパリブ(製品名:リムパーザ)+ベバシズマブ(製品名:アバスチン)併用療法が、無増悪生存期間を有意に延長しました。
PAOLA-1試験、進行卵巣がんの初回治療後の維持療法としてリムパーザを再肯定
アストラゼネカは8月22日、進行卵巣がんに対する第3相PAOLA-1試験の結果を発表しました。
PAOLA-1試験は、ステージ3~4期の高異型度漿液性または類内膜卵巣がん、卵管がん、腹膜がんと診断された患者さんを対象に行われました。プラチナ製剤ベースの化学療法とベバシズマブによる1次治療に対して奏効を示した患者さんに、初回治療後の維持療法として、オラパリブ+ベバシズマブ併用またはベバシズマブ単剤を投与。有効性と安全性を評価しました。その結果、主要評価項目の無増悪生存期間は、併用療法が、単剤と比べて有意な延長が認められました。安全性と忍容性に関しては、それぞれの薬剤に関するこれまでに認められていたプロファイルと一致していました。
同社のオンコロジー領域の研究開発担当エグゼクティブバイスプレジデントであるJosé Baselga氏は、「PAOLA-1試験の良好な結果は、進行卵巣がん患者に対して標準治療であるベバシズマブにリムパーザを併用することの潜在的なベネフィットを明らかに示しています。BRCA遺伝子変異陽性の患者さんに対するSOLO-1試験の良好な結果に続き、PAOLA-1試験は、リムパーザを進行卵巣がん患者さんの初回治療後の維持療法として肯定するもう1つの第3相試験となりました。アストラゼネカは、1日も早く世界中の規制当局と本結果について協議できることを期待しています」と、述べています。
同社とがん領域で戦略的提携を結んでいるMSD研究開発本部シニアバイスプレジデント、グローバル臨床開発責任者でチーフメディカルオフィサーのRoy Baynes氏は、「第3相PAOLA-1試験は、進行卵巣がん患者さんの臨床予後の改善にむけたMSDおよびアストラゼネカの継続的な取り組みを示しています。ARCAGY Researchにより実施された本共同臨床試験では、実臨床の環境下において、標準治療へのリムパーザの維持療法追加が評価されました。より広範な患者集団においてリムパーザを検討することで、より多くの進行卵巣がん患者さんに本剤が有効である可能性を知ることができました」と、述べています。
BRCA1/2遺伝子は、傷ついたDNAを修復する働きをする「BRCAタンパク質」が作られる遺伝子です。このBRCA1/2遺伝子に変異があると、DNAの修復機能が正しく働かないため、細胞はがん化しやすくなります。BRCA1/2遺伝子のほかにも、傷ついたDNAを修復する働きをするタンパク質があり、その1つが「PARPタンパク質」です。オラパリブは、PARPタンパク質を阻害する分子標的薬で、BRCA1/2遺伝子変異によってがん化した細胞に特異的に働きます。すなわちオラパリブは、BRCA1/2遺伝子変異をもつがん細胞に、新たに生じたDNA損傷の修復を妨げることにより、細胞死を誘導する薬です。
オラパリブは、BRCA遺伝子変異の有無に関わらず、プラチナ感受性の再発卵巣がんの維持療法として64か国で承認されています。また、BRCA遺伝子変異陽性の進行卵巣がん患者さんのプラチナ製剤ベースの化学療法後の維持療法として日本を含め数か国で承認されていますが、オラパリブ+ベバシズマブ併用療法は、国内未承認です。