フラボノイドでがん予防? パセリやセロリに含まれる成分
2019/12/23
文:がん+編集部
フラボノイドに属する成分にがん予防の可能性がある、という研究が発表されました。パセリやセロリに多く含まれている成分です。
ヒトに対する有効性・安全性は、さらなる研究と臨床試験が必要
京都大学は12月4日、ポリフェノールの仲間のフラボノイドに属する「アピゲニン」と「ルテオリン」と呼ばれる2つの成分に、メッセンジャーRNA(以下、mRNA)のスプライシングを効果的に調整する働きがあることを発見したと発表しました。これは、フラボノイドによってがん細胞の増殖を抑制できる可能性があるということを示唆。同大大学院生命科学研究科 増田誠司准教授、名古屋市立大学大学院医学研究科 渋谷恭之教授らの研究グループによるものです。
DNA上の遺伝情報は「mRNA」と呼ばれる物質へ一旦コピーされ、mRNAの情報をもとに、生命活動に必要なタンパク質が体内で合成されます。また、RNAには、タンパク質の合成に必要な領域と不要な領域が交互に存在します。不要や領域を除去してタンパク質の合成に必要な領域を順番に連結することをスプライシングといいます。がんは、mRNAのスプライシングを阻害する薬剤に対し高い感受性を示す場合があります。
研究グループはこの性質に注目し、もし食品成分中にスプライシングを制御する活性があれば、がん予防に役立つ可能性があると考え、スプライシングを阻害する成分を食品中から探索しました。その結果、見つけたのがポリフェノールの仲間のフラボノイドに属するアピゲニンとルテオリンという成分です。この成分は、パセリやセロリに多く含まれています。
この成分が細胞の中でどのように働いているかを調べたところ、さまざまなmRNAのスプライシングパターンを変えていることがわかりました。さらに、正常細胞よりも増殖を阻害することもわかりました。
研究グループは、今回の発見に対する波及効果と今後の予定として次のように述べています。
「パセリやセロリなど野菜や果物に多く含まれているアピゲニンやルテオリンにmRNAスプライシングを調節する機能を見出しました。これまで個別のmRNAのスプライシングを制御する食品因子は知られていましたが、遺伝子全般にわたって解析を行った成果は本研究が初めてです。さらに実際に腫瘍を形成する細胞と正常細胞を比べてみると、腫瘍を形成する細胞の方が、明らかに効果の大きいことを見つけました。ただしこれは培養細胞での知見です。人において本当に効果があるのか、副作用はないのか、などについて、まずは実験動物から明らかにしていくことが必要です。すでに微生物から見つけられているmRNAスプライシングを阻害する化合物での臨床試験では、副作用の問題で中止になった化合物もあるので、慎重に研究を進めることが必要です」