リムパーザ、HRR関連遺伝子変異のある転移性前立腺がんの治療薬としてFDAが承認

2020/06/18

文:がん+編集部

 オラパリブ(製品名:リムパーザ)が、相同組換え修復(HRR)関連遺伝子変異のある転移性去勢抵抗性前立腺がんに対する治療薬として米国食品医薬品局(FDA)から承認されました。

PROfound試験では、病勢進行あるいは死亡リスクを66%低減

 アストラゼネカと米メルク社は5月20日、HRR関連遺伝子変異のある転移性前立腺がんの治療薬としてオラパリブが、FDAから承認を取得したことを発表しました。今回の承認は、第3相PROfound試験の結果に基づくものです。

 PROfound試験は、新規ホルモン製剤のアビラテロン(製品名:ザイティガ)またはエンザルタミド(製品名:イクスタンジ)の治療歴のある転移性去勢抵抗性前立腺がんでBRCA1/2、ATM、またはその他12のHRRに関連する遺伝子のいずれかに変異が認められる患者さんが対象。HRR遺伝子変異の種類により2つのグループにわけ、オラパリブを評価しました。

 主要評価項目は、BRCA1/2またはATM遺伝子変異がある患者さんの無増悪生存期間でした。結果、病勢進行あるいは死亡リスクを66%低減し、無増悪生存期間の延長が示されました。

 副次的評価項目として、全患者さん(BRCA1/2、ATM、CDK12およびその他11のHRR関連遺伝子がある患者さん)対象の解析も行われました。その結果、オラパリブ投与群で無増悪生存期間の延長が示され、病勢進行あるいは死亡リスクが51%低減しました。

 HRR遺伝子は、正常な細胞のDNAが傷ついたときの修復に関与する遺伝子です。HRRが欠損するとDNAの損傷が修復されず、正常細胞の死をもたらしますが、がん細胞では、HRR経路の変異が異常な細胞を増殖させます。HRR遺伝子変異は、転移性の去勢抵抗性前立腺がん患者さんの約20~30%で発現しています。

 PROfound試験の治験責任医師の一人でノースウェスタン大学Robert H. Lurie Comprehensive Cancer CenterのMaha Hussain副所長は、次のように述べています。

 「前立腺がんは、他のがん種と比べてプレシジョン・メディシンへの対応が遅れていました。今回のリムパーザの承認により、米国においてHRR関連遺伝子変異を有する転移性去勢抵抗性前立腺がん患者さんに分子標的治療を提供できることを大変嬉しく思います。また、PROfound試験に対して、さまざまな国から患者さんやその家族、医師および研究チームが参加くださり、本試験に協力くださったことに感謝しています」