膵臓がんの発生メカニズムに迫る、「STK11」遺伝子に異常のある膵管内乳頭粘液性腫瘍の特徴を解明
2021/03/25
文:がん+編集部
膵臓がんの発生メカニズムに迫る、「STK11」遺伝子に異常のある膵管内乳頭粘液性腫瘍の特徴が明らかになりました。STK11遺伝子を標的とした膵臓がんの早期発見や新たな治療法の開発が期待されます。
膵臓がんの早期発見やSTK11を標的とした新規治療戦略の開発に期待
東北大学は3月5日、STK11遺伝子異常がある膵管内乳頭粘液性腫瘍の遺伝学的、臨床病理学的な5つの特徴を明らかにしたことを発表しました。同大大学院医学系研究科病態病理学分野の大森優子助教、古川徹教授らを中心とした研究グループによるものです。
膵管内乳頭粘液性腫瘍は、膵臓にできるのう胞性腫瘍の代表的な1つです。膵管内部で盛り上がるように増殖し、粘液分泌が特徴的な腫瘍です。膵管内で発生した腫瘍が、浸潤して膵臓がんを形成します。
腫瘍抑制遺伝子であるSTK11遺伝子は、膵臓がんの発生や進展に直接的にかかわる重要な役割を果たす遺伝子ですが、膵管内乳頭粘液性腫瘍における腫瘍化への役割は明らかになっていませんでした。
研究グループは、膵管内乳頭粘液性腫瘍の手術切除標本について病理学的解析と次世代シーケンサーによる遺伝子解析を行いました。その結果、STK11遺伝子異常がある膵管内乳頭粘液性腫瘍の5つの特徴を突き止めました。その1つは、がん遺伝子の1つ「KRAS遺伝子」の機能活性化変異と相助し、特徴的な形状の膵管内乳頭粘液性腫瘍を形成するということです。
今回の研究成果により、膵管内乳頭粘液性腫瘍の患者さんに対し、STK11を観察することで、膵臓がんの早期発見やSTK11を標的とした新規治療戦略の開発が期待されます。