カルケンス、慢性リンパ性白血病に対し有害事象が少なく、長期間に渡り有効性を持続

2021/07/12

文:がん+編集部

 慢性リンパ性白血病を対象にアカラブルチニブ(製品名:カルケンス)を評価した2つのELEVATE試験の結果を発表。治療歴のある患者さん対象の試験で、アカラブルチニブは、イブルチニブ(製品名:イムブルビカ)と比べて無増悪生存期間は同等で、心房細動の発現率の減少を示しました。

「カルケンス+ガザイバ」併用療法、「リューケラン+ガザイバ」併用療法と比べ病勢進行または死亡リスクを90%低下

 英アストラゼネカは6月7日、慢性リンパ性白血病患者さんを対象にアカラブルチニブを評価した、ELEVATE-RR試験とELEVATE-TN試験の結果を発表しました。

 ELEVATE-RR試験は、治療歴がある17p欠失または11q欠失が認められた難治性の慢性リンパ性白血病患者さん533人を対象に、2種類のBTK阻害薬アカラブルチニブとイブルチニブを直接比較した第3相試験です。

 追跡調査期間(中央値)40.9か月時点の解析では、アカラブルチニブとイブルチニブの無増悪生存期間は、どちらも38.4か月で非劣性が認められました。また、主要な副次評価項目である全グレードの心房細動の発現率が、アカラブルチニブはイブルチニブに対し統計学的に有意に低いことが示されました。

 有害事象により治療中止に至ったのは、アカラブルチニブ14.7%、イブルチニブ21.3%でした。全グレードのアカラブルチニブとイブルチニブで認められた有害事象の発現率は、心血管イベント24.1%と30.0%、出血性イベント38.0%と51.3%、高血圧9.4%と23.2%、感染症78.2%と81.4%、間質性肺疾患/肺炎2.6%と6.5%、悪性黒色腫以外の皮膚がんを除く治療関連二次性悪性腫瘍9.0%と7.6%などがありました。重篤な有害事象は、アカラブルチニブ53.8%、イブルチニブ58.6%で発現しました。

 ELEVATE-TN試験は、治療歴のない慢性リンパ性白血病を対象に、「アカラブルチニブ+オビヌツズマブ(製品名:ガザイバ)」併用療法、アカラブルチニブ単剤療法、「クロラムブシル(製品名:リューケラン)+オビヌツズマブ」併用療法を比較して、安全性と有効性を評価した第3相臨床試験です。

 追跡調査期間(中央値)46.9か月の解析では、「アカラブルチニブ+オビヌツズマブ」併用療法は「クロラムブシル+オビヌツズマブ」併用療法に比べ、病勢進行または死亡リスクを90%低下し、アカラブルチニブ単剤療法でも81%低下しました。「アカラブルチニブ+オビヌツズマブ」併用療法またはアカラブルチニブ単剤療法では、48か月時点で推定される無増悪生存率はそれぞれ87%と78%であったのに対し、「クロラムブシル+オビヌツズマブ」併用療法では25%でした。無増悪生存率の結果は高リスクのサブグループ間でも一貫していました。

 安全性に関しては、24か月時点の中間解析時から概ね変化せず、投与中止率は同程度でした。最も多かった投与中止理由は、有害事象および病勢進行でした。「アカラブルチニブ+オビヌツズマブ」併用療法、アカラブルチニブ単剤療法、「クロラムブシル+オビヌツズマブ」併用療法の3つの治療法で注目すべき有害事象の発現率はそれぞれ、心臓事象(20.8%、19.0%、7.7%)、出血(47.2%、41.9%、11.8%)、高血圧(7.9%、7.3%、4.1%)、感染症(75.3%、73.7%、44.4%)および二次性悪性腫瘍(15.7%、13.4%、4.1%)などでした。

 オハイオ州立大学の特別栄誉教授であり、ELEVATE-RR試験の治験責任医師でもあるJohn C. Byrd医学博士は次のように述べています。

 「心臓の有害事象は、重大な病的状態を引き起こし、治療中止に繋がる可能性もあるため、ブルトン型チロシンキナーゼ阻害剤による慢性リンパ性白血病患者さんの治療において重要な考慮事項となります。これらのデータは、カルケンスが忍容性の良好な治療選択肢であり、心血管系毒性が低く、有害事象による中止が全体的に少なかったことを示す説得力のあるエビデンスとなります。医師にとって本剤を処方する際には、患者さんの病気をコントロールしながら治療を継続できているという自信にもつながります」

※:非劣性とは、「効果は許される範囲内で劣る可能性はあるが、それを上回るメリットがある」ということです。