CAR-T細胞療法Cilta-cel、再発または難治性の多発性骨髄腫患者さんに対し持続的な有効性を示す
2021/07/14
文:がん+編集部
再発または難治性の多発性骨髄腫患者さんを対象に、CAR-T細胞療法ciltacabtagene autoleucel(Cilta-cel)を評価した臨床試験「CARTITUDE試験」の解析結果を発表。持続的な有効性が示されました。
CARTITUDE-1試験の長期解析、全奏効率98%、厳格な完全奏効80%
ヤンセンファーマは6月1日、B細胞成熟抗原(BCMA)を標的としたCAR-T細胞療法cilta-celに関する最新データを発表しました。今回発表されたデータは、第1b/2相CARTITUDE-1試験と第2相CARTITUDE-2試験の解析結果です。
CARTITUDE-1試験は、再発または難治性多発性骨髄腫の成人患者さんを対象にcilta-celの安全性と有効性を評価する第1b/2相です。対象患者さんの99%が最終ラインの治療薬に対して抵抗性を示しており、88%が免疫調整薬、プロテアソーム阻害薬、抗CD38抗体に反応しない、または反応しなくなり、3種類のカテゴリの薬剤に対する抵抗性を示しています。第1b相パートで、cilta-celの安全性と推奨用量を確認し、第2相パートでは推奨用量による有効性が評価されました。
18か月(中央値)の長期追跡調査の結果、全奏効率98%、厳格な完全奏効を達成した患者さん80%と、時間経過とともに奏効が深まっていることが明らかになりました。また18か月時点で、患者さんの66%が増悪することなく生存していることもわかりました。事前に指定されていたサブグループおよび治療ライン間でも同等の奏効率が示されました。
安全性に関しては、これまでに報告された安全性プロファイルと一致しており、より長期の追跡調査でも新たな安全性シグナルは観察されませんでした。最も一般的な血液に関連する有害事象は、好中球減少症(96%)、貧血(81%)、血小板減少症(79%)、白血球減少症(62%)、リンパ球減少症(53%)でした。サイトカイン放出症候群(過剰な免疫反応に伴い、細胞から多量のサイトカインが放出され、血中のサイトカイン濃度が高度に上昇)は95%で認められ、発症した患者さんの95%がグレード1/2でした。また、全グレードの神経毒性が21%で認められ、グレード3以上の神経毒性は10%でした。
CARTITUDE-2試験は、cilta-celの安全性および有効性を評価する複数のパートで構成された第2相試験です。免疫調整薬やプロテアソーム阻害薬を含む治療を1~3回受けても進行したレナリドミド(製品名:レブラミド)抵抗性で、BCMAを標的とした治療歴がない多発性骨髄腫患者さんを対象としたパートでは、主要評価項目として微小残存病変※の陰性率で評価されました。
追跡期間5.8か月(中央値)時点の解析では、全奏効率95%、厳格な完全奏効45%、完全奏効30%、非常に良い部分奏効10%、部分奏効10%と、早期かつ深い奏効を示しました。
サイトカイン放出症候群の発現率や最も一般的な血液に関連する有害事象を含む全体的な安全性プロファイルは、これまでに報告された安全性プロアイルと一致していました。神経毒性は、患者さんの20%で発現しましたが、運動機能および神経認知機能に関わる治療誘発性の有害事象およびグレード3の神経毒性の事象は認められませんでした。
レバインがん研究所の形質細胞疾患部門長で本試験の治験責任医師であるSaad Z. Usmani医師は次のように述べています。
「濃厚な前治療歴のある多発性骨髄腫患者さんにおけるcilta-celの有効性は、優れたものでした。報告された無増悪生存期間を達成できる可能性と、より長期の観察で深い奏効が得られたことから、cilta-celが、将来新たな治療を必要とする患者さんの選択肢の1つとなることを期待しています」
※微小残存病変は、手術や化学療法により、一定の効果が確認されても患者さんの体内に残っている病変(がん細胞)です。