乳がんの手術痕を気にせず入浴、使い捨てタイプの入浴着を開発
2021/08/27
文:がん+編集部
乳がんで切除手術を受けた女性が、手術痕を気にすることなく入浴できる使い捨てタイプの入浴着が開発されました。
着脱がしやすく、お湯切れの良い、肌に近い色の生地で着用が目立たないデザインを実現
畿央大学は8月3日、乳がんの手術痕を気にせずに入浴できる使い捨てタイプの入浴着を開発したことを発表しました。同大学健康科学部人間環境デザイン学科の村田浩子教授、小松智菜美助手、看護医療学科の中西恵理講師、理学療法学科の福森貢教授、村田ゼミの学生らの研究グループによるものです。
2016年に行われた乳がん術後女性を対象とした予備調査では、回答者の約半数が「温泉に行きたくてもいけない経験をした」と回答。市販されている入浴着も半数の人が「知らない」と答え、入浴施設でも入浴着が認知されておらず、奈良県内の施設ではほとんど知られていませんでした。2020年に再度実施されたアンケート調査でも、入浴着の認知度は術後女性・施設とも低く、「知らない」「あまり知らない」と回答した女性が57%、施設で88%にもおよんでいました。
今回の入浴着開発では、奈良県福祉医療部疾病対策課、文化・教育・くらし創造部消費・生活安全課の協力を得て、アンケート調査を基に試作・着用テストが繰り返し行われ、着脱しやすく、お湯切れの良いデザインが実現しました。湯につかっても浮き上がらずに、湯から出たときの湯切れもよくするために、生地の外側を撥水性に、内側は吸水性をもつ素材が使用されています。また、生地の内層部に伸縮性のあるポリウレタンを使用し、背中をV字型に大きく開けるデザインにすることで体を洗いやすく、かつ首、裾部分のどちらからでも、着用時の動作や脱着がしやすくなっています。さらに、肌に近い色の生地を使用することで目立たず、胸上部の切り替え部分にギャザーを入れ、左右の胸のバランスをカバーするよう配慮されています。
奈良県は、2021年3月に県内すべての施設に「入浴着を着用した入浴に理解を求める」ポスターを制作・配布し、県民への周知と理解を求めました。
研究グループは今後の展開として、次のように述べています。
「今後は入浴施設での運用を試みるとともに、持ち込みタイプのマイ入浴着についても、素材開発を進めていきます」