BRCA1/2遺伝子の病的変化、胃がん、食道がん、胆道がんの発症リスクにかかわることを解明
2022/05/23
文:がん+編集部
乳がんなど4種類のがんの発症リスクにかかわる原因遺伝子「BRCA1/2遺伝子」の病的変化が、胃がん、食道がん、胆道がんの発症リスクも上昇させることが明らかになりました。
胃がん・食道がん・胆道がん、BRCA1/2遺伝子検査による早期発見やPARP阻害薬による治療効果が期待
理化学研究所は2022年4月15日、BRCA1遺伝子とBRCA2遺伝子の病的変化が、東アジアに多い、胃がん、食道がん、胆道がんの発症リスクも上昇させることを明らかにしたことを発表しました。同研究所生命医科学研究センター基盤技術開発研究チームの桃沢幸秀チームリーダー、碓井喜明特別研究員、関根悠哉大学院生リサーチ・アソシエイト、東京大学の村上善則教授、松田浩一教授、愛知県がんセンターの松尾恵太郎分野長、国立がん研究センター中央病院の吉田輝彦部門長、佐々木研究所附属杏雲堂病院の菅野康吉科長、昭和大学病院の中村清吾特任教授らの国際共同研究グループによるものです。
BBRCA1/2遺伝子の病的変化は、乳がん、卵巣がん、前立腺がん、膵臓がんの発症リスク上昇にかかわることがすでにわかっています。
研究グループは、10万人以上を対象に14がん種(胆道がん、乳がん、子宮頸がん、大腸がん、子宮体がん、食道がん、胃がん、肝がん、肺がん、リンパ腫、卵巣がん、膵臓がん、前立腺がん、腎がん)に対し、BRCA1/2遺伝子のゲノム解析を実施。その結果、BRCA1/2遺伝子の病的変化が、東アジアに多い胃がん、食道がん、胆道がんの3がん種の疾患リスクを高めることを発見しました。
BRCA1/2遺伝子に病的変化をもつ乳がんと卵巣がんの患者さんに対しては、PARP阻害薬による治療効果が高く、2018年に国内でも保険適用となり、2020年には、前立腺がんと膵臓がんも対象となっています。今回の研究成果は、BRCA1/2遺伝子に病的変化がある胃がん、食道がん、胆道がんに対しても、BRCA1/2遺伝子検査による早期発見や、PARP阻害薬による治療効果が期待できることを示唆しています。
研究グループは今後の期待として、次のように述べています。
「今回の研究成果により、BRCA1/2両遺伝子が関与するがん種がすでにPARP阻害剤の保険適用となっている4がん種よりも多く存在することが明らかになり、今後、新たに同定されたがん種についても個別化医療が進むものと期待できます。また、発症との関連が強い遺伝的要因が明らかになったことで、今後、喫煙・飲酒などの生活習慣や、胃がんのヘリコバクター・ピロリ菌のような細菌感染やウイルス感染、あるいはゲノム全体の遺伝的バリアントの影響(ポリジェニックリスクスコア)など、他の要因と解析が可能になります。これらの情報が統合されることで、より一人一人のゲノム情報や生活環境に合わせた個別化医療が可能になると考えられます」