HER2陽性の再発・進行骨・軟部肉腫と婦人科悪性腫瘍を対象に、HER2 CAR-T細胞の医師主導治験を開始
2022/05/25
文:がん+編集部
HER2陽性、再発・進行の骨・軟部肉腫と婦人科悪性腫瘍を対象に、非ウイルス遺伝子改変HER2 CAR-T細胞の医師主導治験が開始されました。
BP2301、固形がんで高発現するHER2を標的抗原とするCAR-T細胞療法
信州大学は2022年5月9日、HER2 CAR-T細胞療法「BP2301」の医師主導治験「HER2陽性の再発・進行骨・軟部肉腫及び婦人科悪性腫瘍を対象とする非ウイルス遺伝子改変HER2 CAR-T細胞の臨床第1相医師主導治験」を開始したことを発表しました。
今回の治験は、標準治療が不応・不耐もしくは標準治療後に再発または進行した、難治性の骨・軟部肉腫および婦人科悪性腫瘍患者を対象に、HER2 CAR-T細胞療法「BP2301」を評価する第1相試験です。主要評価項目は各用量における用量制限毒性の発現割合、副次的評価項目は有害事象の発生状況、奏効割合、病勢コントロール率、探索的評価項目は、CAR-T細胞の体内動態、血中サイトカイン濃度です。治験募集人数は最大12人で、予定試験期間は2022年5月~2025年4月です。
BP2301は、さまざまな固形がんで高発現するHER2を標的抗原とするCAR-T細胞療法です。血液がんに対するCAR-T細胞療法は、70~90%の奏効が認められることがありますが、固形がんでは、CAR-T細胞が疲弊し、十分に機能を発揮できないという課題がありました。この課題を解決するために、BP2301では疲弊抵抗性と持続的抗腫瘍効果が期待される「幹細胞様免疫記憶型細胞」を多く含むCAR-T細胞が用いられています。これは、同大医学部小児医学教室の中沢洋三教授の非ウイルス遺伝子導入法に基づき、中沢教授および同大・学術研究・産学官連携推進機構の柳生茂希教授と新規CAR-T細胞培養法を共同開発することで実現しました。
信州大学は今後期待される展開として、次のように述べています。
「本医師主導治験でHER2 CAR-T細胞の安全性が確認され、有効性も期待できる場合は、1日でも早く1人でも多くの患者さんに届けられるように、企業治験へ橋渡し、薬事承認を目指します。また、独自に開発した本製品の非ウイルスベクター製法は、簡便かつ低コストで高性能な製品製造が可能となるため、産学官連携を通じてわが国の新しい医療産業振興に貢献できると考えています」