アルペリシブ、PIK3CA遺伝子変異があるHR陽性HER2陰性の転移性乳がんに対し主要なバイオマーカーに関わらず有効性を示す
2022/07/07
文:がん+編集部
PIK3CA遺伝子変異があるHR陽性HER2陰性の転移性乳がん患者さんを対象としたSOLAR-1試験の解析で、主要なバイオマーカーに関わらずアルペリシブの有効性が示されました。
主要な原因遺伝子であるPIK3CAを選択的に標的とする重要性を確認
ノバルティスは2022年6月3日、SOLAR-1試験の後ろ向き解析の結果を、2022年米国臨床腫瘍学会年次総会で報告したことを発表しました。
SOLAR-1試験 は、アロマターゼ阻害薬単独またはCDK4/6阻害薬との併用で治療中または治療後に進行が認められた、PIK3CA変異陽性、HR陽性HER2陰性の進行性または転移性乳がん閉経後女性および男性患者さん527人を対象に、「アルペリシブ+フルベストラント」併用療法と「プラセボ+フルベストラント」を比較した第3相試験です。
主要評価項目はPI3CA変異がある患者さんに対する無増悪生存期間、重要な副次的評価項目は全生存期間、追加の副次的評価項目は全奏効率、臨床的有用率、健康関連のQOLなどでした。
後ろ向き解析の結果、ESR1遺伝子変異がある患者さんでは、「アルペリシブ+フルベストラント」併用療法の無増悪生存期間(中央値)12.0か月、フルベストラント単独投与6.5か月でした。
また、CDK4/6阻害薬に対する耐性との関連が認められているFGR1/FGR2遺伝子変異がある患者さんに対しても、「アルペリシブ+フルベストラント」併用療法は、フルベストラント単独投与と比較して無増悪生存期間の改善が認められました。
それぞれの無増悪生存期間(中央値)の結果は以下の通りです。
「アルペリシブ+フルベストラント」併用療法
FGR1遺伝子変異:12.7か月
FGR2遺伝子変異:9.6か月
フルベストラント単独投与
FGR1遺伝子変異:3.8か月
FGR2遺伝子変異:2.8か月
「アルペリシブ+フルベストラント」併用療法で認められた有効性は、TP53、CCND1、MAP3K1およびARID1Aを含むその他の遺伝子変異、またはMAPK経路の遺伝子、RB11などのCDK4/6阻害薬に関わる遺伝子とは無関係でした。ほとんどのバイオマーカーの遺伝子変異に関係なく、「アルペリシブ+フルベストラント」併用療法による臨床的な有効性が維持されていることが示されました。
Mass General Cancer CenterのTermeer Center for Target TherapiesのディレクターであるDejan Juric医学博士は、次のように述べています。
「様々な遺伝子変異を有するHR+/HER2-進行性乳がん腫瘍を対象にアルペリシブとフルベストラントを評価した本解析により、これらの腫瘍においてアルペリシブを用いて主要な原因遺伝子であるPIK3CAを選択的に標的とする重要性が確認されました」