腎臓がんの再発・転移

腎臓がんの経過観察、再発や転移に対する治療法、支持療法緩和ケア)を紹介します。

腎臓がんの経過観察

 経過観察は、海外の3つのガイドライン(NCCN、AUA、EAU)を参考に、日本の現状に応じて行われます。

 最大径4cm以下で限局している早期の腎臓がんは、高齢者や合併症の多い患者さんの場合、監視療法(経過観察を行いながら過剰な治療を防ぐ治療法)が選択肢の1つとして検討されます。

 根治的腎摘除術後の経過観察における検査法や時期は、再発リスクに応じて決定されます。腎臓がんに特異的な腫瘍マーカーは現状では特定されていないため、経過観察中の検査としては主に画像検査が行われます。

 NCCNとAUAによると、経過観察の検査法や時期は、T分類とN分類によるリスク分類により決められています。EAUでは、UISSリスク分類に沿った経過観察が推奨されており、この方法での経過観察は局所再発や遠隔転移の発見に有用とされています。

AUAガイドラインの経過観察

 AUAガイドラインでは、T1、Nx~0の患者さんに対する経過観察として、術後3~12か月以内に、腹部画像検査としてCTMRI、超音波検査が推奨されています。それ以降は、血行性転移、リンパ節転移のリスクは低いため、必要に応じて検査が行われます。

 T2~4、Nx~0もしくはT分類に関わらずN1の患者さんに対しては、術後3~6か月以内に腹部画像検査としてCT、MRIが行われます。術後3年までは6か月ごと、4~5年目は1年ごとの定期検査(CT、MRI、超音波検査)、5年目以降も画像検査を継続することが推奨されています。

EAUガイドラインの経過観察

 UISSリスク分類で低リスクと判定された患者さんに対しては、術後5年間の経過観察が行われますが、腹部CTやMRI検査を頻繁に行う必要はないとされています。術後6か月に超音波検査が行われ、術後1年目から腹部CT/MRIによる横断的画像診断と超音波検査が1年ごとに交互に行われます。

 中リスクと判定された患者さんに対しては、術後5年目までは毎年腹部CT/MRIによる横断的画像診断が推奨され、術後3年目のみ超音波検査でも可能とされています。

 高リスクと判定された患者さんに対しては、術後2~3年目までは中リスクより綿密な横断的画像診断が推奨されています。

NCCNガイドライン経過観察

術後の経過月612182430364860
T1 Nx~0
一般検査
腹部画像検査
胸部画像検査
T2 Nx~0、T1~2 N1
一般検査
腹部画像検査
胸部画像検査
T4 Nx~1
一般検査病態、症状に応じて適宜判断
腹部画像検査
胸部画像検査

※△以降の検査についての必要性は医師の判断による
出典:日本泌尿器学会編 腎臓癌診療ガイドライン2017年版.6フォローアップ.表1より作成

AUAガイドライン経過観察

術後の経過月3612182430364860
T1 Nx~0
一般検査
腹部画像検査
胸部画像検査
T2~4 Nx~0、Tにかかわらず N1
一般検査
腹部画像検査
胸部画像検査

※△以降の検査についての必要性は医師の判断による
出典:日本泌尿器学会編 腎臓癌診療ガイドライン2017年版.6フォローアップ.表2より作成

EAUガイドライン経過観察

術後の経過月6か月1年2年3年4年5年5年以降
低リスク超音波CT超音波CT超音波CT終診
中リスクCTCTCT超音波CTCTCT/2年
高リスクCTCTCTCTCTCTCT

出典:日本泌尿器学会編 腎臓癌診療ガイドライン2017年版.6フォローアップ.表4より作成

UISSリスク分類

低リスクT1、G1~2、PS:0
中リスクT1、G1~2、PS:0もしくはT1、G3~4、PS:0
T2、すべてのG、PS:すべて
T3、G1、PS:0もしくはT3、G1未満、PS:0
高リスクT3、G1未満、PS:0
T4、すべてのG、PS:すべて

※Gはgrade(グレード)で、がんの悪性度のことです。腎臓がんでは1~4に分類されます。
出典:日本泌尿器学会編 腎臓癌診療ガイドライン2017年版.6フォローアップ.表3より作成

腎臓がんの再発と転移に対する治療

 腎臓がんの初回治療で腎摘除術を受けた場合でも、再発することがあります。再発した場合は、ステージ4に対する治療と同様に、薬物療法が中心に行われますが、再発の状況によって、手術も選択肢の1つとなります。

 転移に対する治療は、病態に応じて薬物療法や放射線治療が行われます。脳転移に対しては、放射線治療のガンマナイフや定位放射線治療が有効とされています。また、骨転移に対しては、疼痛の緩和とQOLの改善を目的に放射線治療が行われます。

 全身状態が良好、無病期間が長い、転移巣の完全切除が可能な場合は、転移巣に対する切除手術が行われることがあります。

腎臓がんの支持療法(緩和ケア)

 緩和ケアは、患者さんががん治療中も自分らしく過ごすことを目的として、がんの治療に伴う身体的な痛みや心のつらさなどを和らげるために行われます。がんが進行し治療法がなくなってから受けるものと誤解されることもありますが、正しくは、がんが見つかったときから治療中も必要に応じて行われるものです。

 緩和ケア病棟や緩和ケアを専門にする病院では、緩和ケアに関しての専門的な知識と技術をもつ緩和ケアチームによるケアが受けられます。

 入院治療中でも通院治療中でも緩和ケアは受けられます。手術による痛みはもちろん、化学療法によるつらい副作用の緩和、治療に対する不安や将来に対する不安など、さまざまなつらい症状を緩和するためのケアが受けられます。在宅療養中でも、在宅ホスピスや在宅緩和ケアを行う在宅医や訪問看護師による緩和ケアが受けられます。介護保険も申請すれば利用できるので、自宅で療養を続けることもできます。

参考文献
日本腎臓学会編 腎臓癌診療ガイドライン2020年UPデート版.メディカルレビュー社

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