腎臓がんの治療

腎臓がんのステージ分類に応じた治療法を紹介します。

腎臓がんの外科・局所療法

 腎臓がんの外科・局所療法は、原発巣と転移巣に対して行われます。原発巣に対する治療は、腎摘除術と腎部分切除術(腎機能温存手術)があります。また、低侵襲な治療として、経皮的凍結療法やラジオ波焼灼術も行われます。

 転移巣に対する局所療法は、手術や放射線治療などがあります。

腎摘除術

 T1aやT1bでも、腎部分切除術が困難な場合には腎摘除術が選択されますが、多くの場合は腹腔鏡下手術で行われます。手術法としては、腹部から腹腔内を経由して行われる「経腹膜到達法」と側腹部から腎・副腎に到達する「後腹膜到達法」があり、腫瘍の位置、大きさ、腹部手術の既往などにより選択されます。腫瘍が大きい場合は、位置によっては後腹膜到達法を用いると腫瘍を圧迫する可能性があるため、経腹膜到達法が行われることが多くあります。

 腫瘍の大きさが7cmを超えるT2でも腹腔鏡手術は選択可能ですが、腫瘍が大きい場合は経腹膜到達法が適切とされています。

 腎静脈から下大静脈に腫瘍による塞栓がある場合は、通常開腹手術の適応となります。下静脈まで腫瘍塞栓が進展している場合でも、転移がなければ腎摘除術が推奨されていますが、腫瘍塞栓の程度、全身状態、合併症の有無などにより慎重に検討されます。

 リンパ節転移が疑われる場合は、リンパ節郭清も行われます。腫瘍がある腎臓と同じ側の副腎への転移・浸潤の疑いがある場合は、副腎も同時に摘除されます。副腎への転移・浸潤の疑いがない場合は、副腎機能が低下する可能性を考慮し副腎を温存する傾向にあります。

 遠隔転移がある場合でも、全身状態が良好な場合は、薬物療法前に腎摘除術が行われることがあります。全身状態が不良、他臓器への転移がある場合は、薬物療法が先に行われることがあります。転移巣が1つで切除可能な場合は、原発巣と同時に転移巣も切除される場合もあります。

腎部分切除術(腎機能温存手術)

 腎部分切除術は、腎臓の機能を温存するため病変のある部位を切除する手術です。米国の主要な複数のがんセンターによる非営利団体「NCCN」によるガイドラインなどでは、4cm以下のT1aではできる限り腎部分切除術を選択するとされています。また、4~7cmのT1bに対しても、可能であれば腎部分切除術を実施するように推奨されています。

 腎部分切除術は、手術の難易度により開腹手術、腹腔鏡下手術、ロボット支援手術から選択されます。難易度が高い場合は、開腹手術、何度が低い場合は腹腔鏡下手術が選択されます。腹腔鏡下手術やロボット支援手術では、「経腹膜到達法」と「後腹膜到達法」があり、腫瘍の位置や腹部手術の既往などにより選択されます。開腹手術では、通常、後腹膜到達法が選択されます。

 手術後の腎機能の温存は、血流が止まってから再開するまでの時間(阻血時間)によって左右されるため、阻血時間をできる限り短くする必要があります。そのため、難易度が高く阻血時間が長くなりそうな場合は、開腹手術が選択されることが多くあります。

 ロボット支援手術は、腹腔鏡下手術と比べ、阻血時間が短縮できます。そのため、腹腔鏡下手術が適応となる患者さんに対しても、ロボット支援手術が行われることが多くなってきています。

経皮的凍結療法

 腎臓がんに対する経皮的凍結療法は、CTなどで位置を確認しながら腫瘍に治療用の針を刺し、-20~-40度の氷の塊を作ることでがん細胞を凝固し壊死させる治療法です。侵襲性の低い治療法のため、高齢者や重篤な合併症があり手術ができない患者さん、手術を希望しない患者さんに対して検討されます。繰り返し治療ができるため、再発を繰り返す家族性の腎臓がんに適した治療とされています。

ラジオ波焼灼術

 腎臓がんに対するラジオ波焼灼術は、CTなどで位置を確認しながら腫瘍に針状の電極を刺し、ラジオ波という高周波電流を流し加熱することでがん細胞を壊死させる治療法です。侵襲性の低い治療法のため、高齢者や重篤な合併症があり手術ができない患者さん、手術を希望しない患者さんに対して検討されます。繰り返し治療ができるため、再発を繰り返す家族性の腎臓がんに適した治療とされています。

腎臓がんの放射線治療

 腎臓がんでは、放射線治療で効果を得るのが難しいとされていますが、転移巣に対し症状の緩和を目的に放射線治療は行われます。脳転移に関しては、ガンマナイフや定位放射線治療が有効とされています。また、骨転移に対しては、疼痛の緩和とQOLの改善を目的に症状に応じて検討されます。

腎臓がんの薬物療法

 腎臓がんでは、可能であれば手術が行われますが、手術不可能な場合や、原発巣は切除できても転移巣が残ったような場合には、薬物療法が行われます。薬物療法では、「サイトカイン」「分子標的薬」「免疫チェックポイント阻害薬」といった種類の薬が使用されます。進行腎臓がんでは、リスク分類により一次治療薬が選択されます。二次治療以降は、前治療により選択されます。

サイトカイン療法

 サイトカインは、免疫や炎症反応などに関わる、特定の細胞に働きかけるタンパク質の総称で、インターフェロン(IFN)やインターロイキン(IL)、腫瘍壊死因子(TNF)など複数の種類があります。このうち、腎臓がんの治療で使われるサイトカインはIFNとILで、標準的に使われているのがIFN-αです。IFN-αには、免疫の働きを活性化させ、活性化された免疫細胞ががん細胞を攻撃する働きがあるとされています。

 分子標的薬が登場するまでは、サイトカイン療法が腎臓がんの薬物療法の中心でした。現在は、比較的予後が良いと考えられる患者さんで、少数の小さな肺転移がある場合など、患者さんの病態に応じて選択されます。

分子標的薬

 腎臓がんの治療に使われる分子標的薬は、「チロシンキナーゼ阻害薬」と「mTOR阻害薬」の2種類で、計6剤あります。

分子標的薬の種類

 腎臓がんの治療で使用されるチロシンキナーゼ阻害薬は、がんが増殖するために必要な血管の新生を阻害する薬で「血管新生阻害薬」といい、血管が新たに作られるのを抑制し、がん細胞を栄養不足にすることで治療効果を発揮します。現在、国内で承認されている血管新生阻害薬は、スニチニブ(製品名:スーテント)、ソラフェニブ(製品名:ネクサバール)、パゾパニブ(製品名:ヴォトリエント)、アキシチニブ(製品名:インライタ)の4剤です。

 腎臓がんの治療で使われるmTOR阻害薬は、がんの成長に関わるmTOPという分子の働きを阻害することで、がんの増殖を抑制します。現在、国内で承認されているmTOR阻害薬は、エベロリムス(製品名:アフィニトール)とテムシロリムス(製品名:トーリセル)の2剤です。

一次治療で使用される分子標的薬

 MSKCC分類で低リスクもしくは中リスクと判定された「淡明細胞型腎細胞がん」では、スニチニブ、またはパゾパニブが選択されます。高リスクと判定された「淡明細胞型腎細胞がん」では、テムシロリムス、またはスニチニブが選択されます。

二次治療で使用される分子標的薬

 サイトカイン療法あるいは分子標的薬の治療後に治療抵抗性となった場合は、アキシチニブが選択されますが、アキシチニブが患者さんの状態により使用できない場合はソラフェニブが選択されます。

 サイトカイン療法後に治療抵抗性となった場合は、スニチニブまたはパゾパニブが選択されます。

 血管新生阻害の治療抵抗性となった場合は、エベロリムスが選択されます。

三次治療で使用される分子標的薬

 前治療が2種類の血管新生阻害薬だった場合の三次治療は、エベロリムスが選択されます。前治療が1種類の血管新生阻害薬と1種類のmTOR阻害薬だった場合は、ソラフェニブなど血管新生阻害薬が選択されます。

免疫チェックポイント阻害薬

 腎臓がんに対する治療薬として承認されている免疫チェックポイント阻害薬は、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、イピリムマブ、アベルマブの4剤です。いずれも効能または効果は、「根治切除不能または転移性の腎細胞がん」で、術後補助療法としての有効性や安全性は認められていません。

参考文献
日本泌尿器学会 日本病理学会 日本医学放射線学会編 腎癌取扱い規約第5版.メディカルレビュー社
日本泌尿器学会編 腎臓癌診療ガイドライン2017年版. メディカルレビュー社
独立行政法人医薬品医療機器総合機構 医療用医薬品 詳細ページ ニボルマブ
独立行政法人医薬品医療機器総合機構 医療用医薬品 詳細ページ ペムブロリズマブ
独立行政法人医薬品医療機器総合機構 医療用医薬品 詳細ページ イピリムマブ
独立行政法人医薬品医療機器総合機構 医療用医薬品 詳細ページ アベルマブ

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