がん抑制型マイクロRNAによる乳がん抑制の新たなメカニズムを解明

2022/12/13

文:がん+編集部

 がん抑制型マイクロRNAによる乳がん抑制の新規メカニズムが解明されました。乳がんの新たな治療法の開発が期待されます。

miR-874と細胞内代謝の関わりの解析が進むことで、乳がんの新たな治療法の開発が期待

 千葉大学は2022年12月1日、がん抑制型マイクロRNA(miR-874)による乳がん抑制の新規メカニズムを明らかにしたことを発表しました。同⼤学⼤学院医学研究院災害治療学研究所の橋本直⼦助教、⽥中知明教授らの研究グループによるものです。

 がん細胞では、メバロン酸経路の亢進など代謝の変化が⽣じていることが報告されています。メバロン酸経路は、コレステロール合成の主要な経路で、細胞⾻格やシグナル伝達にも関わっています。また、miR-874はこれまでにさまざまながん種で、がんの抑制に作⽤することが知られていましたが、細胞内代謝との関連についてはわかっていませんでした。

 研究グループは、乳がんの細胞株を⽤いて、miR-874のがん抑制機能におけるメバロン酸経路の関わりについて検討したところ、miR-874がメバロン酸経路の遺伝子群の発現を抑制し、乳がん細胞の増殖を抑制することを明らかにしました。また、メバロン酸経路の遺伝子の1つ「PMVK」の発現抑制によって、がん抑制遺伝子「p53」の活性化を伴う増殖抑制が生じることがわかりました。

 miR-874と細胞内代謝の関わりの解析が進むことで、乳がんに対する新たな治療法の開発が期待されます。

 研究グループは今後の展開として、次のように述べています。

 「乳がん細胞株や乳がん症例データベースを⽤いた解析により、miR-874がメバロン酸経路を介して、がんを抑制する作⽤があることが⽰されました。今後はmiR-874を⽤いた治療への応⽤、核酸医薬品の開発を⽬指し、動物モデルを⽤いた治療有効性や安全性について検討していく予定です」